日常茶飯事73
(スパなし)





今日、総ちゃんの友達の“さくらさん”という人が来る。
子供の頃からの友達で、ケーキ屋さんをしているらしい。
でも、ケーキ屋さんをやめて、フランスへ留学するから、その前に総ちゃんに会いたくて、それで今日会いに来るんだって。
それでもって、総ちゃんにケーキを食べてもらいたいからって、家で作ってくれるらしい。
今日は日曜日だから、中沢さんもお休みだしね。





「こんにちはー。」
来た!!
どんな人かな。
「いらっしゃい。久しぶり・・だね・・・。」
総ちゃんと一緒に出迎えたけど・・・。
「・・・・・。
 総ちゃん、さくらさんって男の人って言ってなかった?」
この人、スカート穿いてるし。
ゆうちゃんみたいに“おかま”なのかな・・・。
「う、うん・・・。
 しばらく見ない間に・・・すっかり変わっちゃったね。
 前に会った時は、まだ・・・もうちょっと男だったんだけど・・・。」
総ちゃんも知らなかったのかな・・・?
「そんなに驚かなくったっていいじゃない。
“ゆうちゃん”で慣れてるでしょ!?
それに、あらかた予想できてたことでしょ?」
「うん・・・。
 でもこの前の電話では何も言ってなかったから、ちょっとビックリした。」
「だって驚ろかそうと思って黙ってたんだもん。」
やっぱり“おかま”なんだ・・・。



「ねぇ、見てていい?」
中沢さんも料理が上手だけど、さくらさんもすごく上手い。
「うん、いいわよ。
 あ、この水風船あげよっか?」
「うん。」
そう言うと、さくらさんはテーブルの上に置いていた水風船を僕にくれた。
「でも、水風船なんてどうしたの?
 何かに使うの?」
ケーキを作るのに、全く関係ないと思うだけど・・・。
「うん、これはね・・・。
 こうして風船にホワイトチョコレートを絡めて・・・しばらくしたら固まるから・・・。」
さくらさんは、溶けたホワイトチョコに水風船を沈めて、そして取り出した。
取り出した水風船は当然チョコまみれで・・・。
そんなのを何するんだろう?
「で、ちょっと小さい目のをもう一つ・・・。」
もう一つも同じように、ホワイトチョコに沈めた。
「何してるの?」
「何だと思う?」
わからないから聞いてるんじゃない。
「わかんない・・・。」
「じゃあ、できてからのお楽しみ。」
教えてくれてもいいのにケチだなぁ。
「ふーーーん・・・。
 僕、あっちで遊んでくる。」
「あ・・・。」
別に味見ができるわけじゃないし、見ててもやっぱりつまらない。



いつ出来上がるのかなぁ・・・。



僕は水風船で遊びながらリビングに入っていった。
「瀬奈、それ水風船でしょ?どうしたの?」
なんだ、総ちゃんがリビングにいるのか・・・。
それなら自分の部屋に行った方がよかったかも・・・。
「さくらさんにもらった。」
「さくらから?」
「うん、ケーキ作るのに使った残り。」
「ケーキ作るのに、そんなの使うの?」
総ちゃんも何に使うのかわからないみたいだ。
「うん、チョコをつけてたよ?」
「ふーん・・・。
 瀬奈、それ割れたら部屋が水浸しになるから、すぐ拭ける所か外で遊んでくれる?」
「うん、わかった・・・。」
外って言われても、今日は寒いよ・・・。
総ちゃんは何もわかってないんだから。





行くところがないし、やっぱりキッチンに戻ってきた。
「あら、戻ってきたの?
 もうちょっとで出来上がるから待っててね。」
「うん。
 あ・・・もしかして、これさっきのチョコ!?」
テーブルの上に、丸いホワイトチョコが重ねて置いてある・・・。
「中身の水風船は?」
「それはね、こうやって・・・。」
さくらさんは別の、同じように作っていたチョコの、中の水風船を割った。
「なんだ、そうやって取るんだ・・・。」
中の風船を割ってしまえば、チョコの形を崩さなくても取り出せるんだ・・・。
「うん、それでね・・・。
 このチョコをここにくっつけて、こっちは・・・。」
そう言いながら、重ねてあるホワイトチョコの上の段に、マーブルチョコ2つと、小さなチョコを1つをくっつけた。
「あ!!雪だるまだ!!」
すごーーーい!!
「あとはこのバケツを・・・。」
バケツの形のチョコ・・・。
「これも作ったの!?」
「うん。プリン型を重ねてね。」
おもしろーい。

「ねぇ、さくらさんって名前なの?」
総ちゃんは、ゆうちゃんのことを“ゆうか”って新しい名前で呼ばないで、いつも“勇一郎”って呼んでるから、“さくら”さんも新しい名前じゃないと思うんだけど・・・。
「そうよ。
 苗字が“佐倉”で、名前も“さくら”なの。」
「えぇっ!?」
なんか、音楽の教科書に載ってる歌みたいな名前・・・。
じゃあ総ちゃんは苗字の方の“さくら”で呼んでたのかな・・・。
「名前の方は新しい名前なんでしょ?」
「・・・なぁに?男だった時の名前知りたいの?
 でも知ったっておもしろくないでしょ?
 それにちゃんと女の子になったんだから、この名前でいいのよ。」
それはそうだけど・・・。
ゆうちゃんみたいに、すっごく男って感じの名前なのかな・・・。
「男っぽい名前だから変えたの?」
だって、僕みたいな名前だったら、変えなくてもそのまま使えると思う。
「そんなに男っぽい名前じゃなかったわよ。
 女の子の名前として十分使えたけど、でも新しい人生を歩むんだから、やっぱり名前も新しくしたいじゃない?」
そっか。
僕だって総ちゃんの苗字になって、嫌だって思わなかったもん、それと同じような感じなのかな・・・。
「なんとなくわかる・・・。」
「さー、これで完成!!」
さくらさんは、ケーキに小枝のチョコレートを乗せて、白い粉を全体にかけた。
「この・・・最後にかけた粉って何?」
味するのかな・・・。おいしいのかな・・・。
「それは砂糖よ。
 すごく細かい粉砂糖なの。
暖かいところに置いておくとすぐに溶けちゃうから、なるべく早く食べてね。」
そう言ってさくらさんは道具を片付け、エプロンを外した。
「うん・・・。
 さくらさんは食べないの?」
「うん。だっていつも食べてるもの。
 じゃ、総司郎によろしく言っといてね。」
「え?もう帰っちゃうの!?」
だって総ちゃんに会いに来たんじゃないの!?
せっかく作ったのに、総ちゃんの感想とか聞かないでいいの!?
「会ったら別れが辛くなっちゃうもの・・・。」
「でも・・・。
 僕、総ちゃん呼んでくるから待ってて。」
黙って帰ったら、総ちゃん悲しむと思うんだ・・・。
「いいのよ。
 総司郎は仕事してるんでしょ!?」
さくらさんは止めたけど、僕は総ちゃんを呼びに行った。





総ちゃんが慌てて書斎から出た時には、さくらさんはもう玄関を出た後だった。
それでも総ちゃんは追かけて行って、信号のところで追いついたみたいで良かった。



さくらさんが作ったケーキは、あまり甘くなくて、甘いのが苦手な総ちゃんにはちょうどいい感じだったみたいで、おいしいって言ってた。
僕も甘いのはあまり好きじゃないから、さくらさんの作ったケーキはおいしかった。



2010年03月29日(月) 01時03分57秒 公開
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