日常茶飯事<next>番外編−BELOVED−
由奈が小学生になったら育児も少し楽になって、自分の時間も持てると思ってたのに・・・。
3年生になった今も、幼稚園の時とあまり変わらないじゃない。
でも別にそれが不満ってわけでもないんだけどね・・・。

「ママ、公園へ遊びに行ってくるね。」
「誰と遊ぶの?時計は持った?5時までに帰るのよ?」
「えっとね、和斗(かずと)くんと竜也(たつや)くん。」
言い終わらないうちに飛び出して行っちゃった・・・。



あっ、宿題してないじゃない。
遊びに行くのは宿題が済んでからって言ってあるのに。
まぁ、明日から秋の大型連休だからいっか。





「ただいま。」
ん?今の声って・・・。

「瀬奈くん・・・。
 お・・かえり・・・なさい・・・。」
「あ、やっぱり迷惑だった?
 総ちゃんが連休は帰って来いって言うもんだから・・・。」
「う、ううん。全然迷惑なんかじゃないわ!!」
そんなに戸惑ったような顔してたかしら・・・。
ただ、聞いてなかったからビックリしただけ・・・。
大学行ってた頃だって夏休みはおろか、お正月も連休も休日もほとんど帰って来なかったから・・・。

「お茶淹れるわね。」
「由奈は?」
「公園に遊びに行くって、さっき出て行ったの。
 途中で見なかった?」
「うん、会わなかった。」
そうよね、だから聞いてるのよね・・・。
やだ、暫く会ってなかったから、やたら瀬奈くんが大人びて見えて変にドキドキしちゃう。
「私、総司郎さんにもお茶持って行ってくるわね。」
「うん。」

何を話していいかわからなくて、総司郎さんをダシに逃げるようにキッチンから出て来たけど、瀬奈くん、変に思ってないかなぁ・・・。

「総司郎さん、コーヒー淹れて来たの。」
邪魔しちゃ悪いから、書斎のドアを少し開け、仕事の様子を伺うように声をかける。
「さっきも持って来たよねぇ?」
やっぱり頻繁に持って来るのは迷惑で、邪魔だったかしら。
「瀬奈くんが帰って来て、それでコーヒー淹れたからついでに・・・。」
「瀬奈が帰って来てるの!?」
「うん、今さっき・・・。」
すごい嬉しそうな反応だわ。
「久しぶりに顔を見て来よう。」
「あ、コーヒーは?」
「テーブルの上に置いておいて。後で飲むよ。」

総司郎さんは私の方を見ることもなく、いそいそと書斎を出て行った・・・。

総司郎さんはあまり感情を外に出さないけど、瀬奈くんに会うのは久しぶりで嬉しいのね。
そういえば総司郎さん、昔は瀬奈くんによく怒ってたっけ。
今は由奈にも怒ってるけど、瀬奈くんの時ほど感情的にはならないわよねぇ・・・。
由奈はまだ小さいから?それとも聞き分けがいいから?

私、本当に総司郎さんに愛されてるのかな・・・。
総司郎さんが忙しい人だから、そう感じるだけ?
不満があるわけじゃない・・・。
でも、満足感があるわけでもないのよ・・・。
ただ空しく緩やかに時間が過ぎていくだけ・・・そんな気がする時さえあるの・・・。



リビングで談笑している二人の間に入りにくいし、夕食の準備でもしようかな・・・。
瀬奈くんの好物は確かチキンカレーだったわよね。





そういえば、もう5時を回ってるけど、由奈は帰って来てたかしら・・・。

「わ、ママ。」
様子を伺いに玄関へ行ったら、帰って来た由奈と鉢合わせになっちゃった。
「今帰って来たの?
 ママは5時までに帰りなさいって言ったでしょう?」
コッソリ入って来て、そのまま部屋に行って門限までに帰っていた、ってことにする魂胆ね。
夕食時でバタバタしてて、うっかりチェックをしてなくて、今まで何度その手に引っかかったかわからないわ・・・。
「・・・ごめんなさい。」
「門限は守らないし、遊びに行くのも宿題をしてから、って言ってあるのにしてないじゃない。」
そっちは大目に見てあげるけど、門限を守ってなくて姑息な手を使うのは許せないわ。
「お仕置きをするから自分の部屋へ行きなさい。」
由奈の手を引いて、部屋へ連れて行こうとしたら抵抗されてしまった。
「や、やだっ!!ごめんなさいっ!!
 今度から気をつける・・・お仕置きなんてやだぁ!!」
「ちょ・・・由奈!!」
こんなところで座り込まないでよ・・・。
「放して・・・ママッ・・・やだってば!!」
「やだ、じゃないわよ!!」
もう!!大きくなったから、小さい頃みたいに抱えられないじゃない!!

「里加子、由奈、何をやってるの?」
「総司郎さん・・・。
 その・・・由奈が・・・。」
総司郎さんに言い付けるのは簡単だけど、それじゃあ私の威厳が・・・。
「パ、パパ!?何でもない!!
ママ、ご飯の用意しないといけないんでしょ!?
 僕・・・手伝う!!」
「由奈、門限守らなかったでしょ?」
「ち、違うもんっ!!
 庭にいただけだもん!!」
なんだ、バレちゃってるんだ・・・。
「やだっ!!パパ・・・放して・・・。」
逃げかけていた由奈が、総司郎さんの脇に抱えられている。
「総司郎さん・・・由奈は・・・。」
私が毅然としてないから、由奈も総司郎さんに叱られることになるんだわ。
「里加子、キッチンのコンロ、点けっ放しだったよ?」
「えっ!?
 今も点いてるの!?」
「うん。」
“うん”?ちょっと!!総司郎さんってば、気付いててどうして止めてくれなかったの!?

「うわぁぁーーーんっ!!
 パパ・・・ごめんなさいっ!!」
慌ててキッチンへ行こうとしたら、早くもお仕置きが始まった。
何もこんなところでしなくても・・・。
でも・・・瀬奈くんで経験済みだからかしら・・・。
ズボンもパンツも脱がせるのがすごく早いわ。
「門限を守らなかったうえに嘘までついたんだから、たっぷりお仕置きするよ!?」
「や、やだやだやだっ!!
 パパ、やめ・・・痛ぁいっ!!
 ごめんなさいっ・・・やだぁ〜・・・あぁ〜〜〜ん・・・。」
そんなことよりコンロを止めないと・・・。



よかった。
お鍋に水分がまだまだあって・・・。
焦げ付いたら、落とすのが大変なのよね。

お鍋を忘れてたけど、でも由奈も大人しく私にお仕置きをされていれば、総司郎さんに厳しくされることもなかったのに・・・。

でも・・・私に対する態度と、総司郎さんに対する態度が明らかに違うのよね。
由奈は勘のいい子だし、もしかして私は由奈になめられてるのかな・・・。







「瀬奈くん、何してるの?お茶なら私が淹れるけど・・・。」
連休中ずっと家にいるのかしら。
嫌じゃないけど、ずっと緊張してなきゃならないわ。
「うん、総ちゃんがコーヒー淹れてきてって言うから・・・。」
「それなら私が持って行くわ。」
いつも私が淹れるのに、瀬奈くんが帰って来てからずっと、瀬奈くんに淹れさせてるんだから・・・。
「じゃあ里加子さんお願い。
 僕は侑也達と出かけるから、夕食はいらないよ。」
「そう・・・出かけるの・・・。
 気を付けてね。」
「うん。」
私、瀬奈くんが出かけることにホッとしてる・・・。



「あっ!!」
マグカップ落としちゃった。

「瀬奈!!何やって・・・里加子?
 大丈夫?」
「うん、大丈夫・・・。」
ちょっと目眩がしただけ・・・。
最近よく目眩が起きるのよね・・・。
「俺は瀬奈に持って来るように言ったのに・・・。」
「総司郎さん・・・。
 瀬奈くんにはすごい剣幕で怒るのに、私には怒らないのね・・・。」
「里加子は子供じゃないじゃない。」
「瀬奈くんだってもう立派に大人よ。」
「でも瀬奈は俺にとってずっと子供だったから・・・。」
「そうね・・・。」

「あ、カップは私が片付けるわ。」
「いいよ、休憩がてら俺が片付ける。
 ところで瀬奈は?」
「侑也くん達と出かけるんですって。」
「なんだ。家にいないのか・・・。
 何時頃帰って来るって言ってた?」
総司郎さんには子供でも、瀬奈くんは大人なんだから、そこまで干渉するわけにいかないじゃない。
「そこまでは聞いてないわ。
 でも夕食はいらないって。」
「そう・・・。」
どうしてそこで、あからさまに落胆するの?





「由奈はもう寝た?」
「ええ。」
「じゃあ里加子もそろそろ寝てくれてかまわないよ。」
「総司郎さんはまだお仕事するの?」
「うん、こっちでしようと思う。」
リビングで?
「キッチンも近いしね。」
「お茶なら私が・・・。」
「いいよ、自分でするから。
 里加子は疲れてるみたいだから、睡眠を十分にとらないと・・・。
 疲れてる時は我慢しないで。」
そんなに疲れた顔してるのかしら・・・。
「・・・それじゃ・・・おやすみなさい・・・。」
「おやすみ。」





なんだか寝付けない・・・。
総司郎さんはいつも遅くまで仕事をしていて、睡眠も不定期で一緒に寝ることは少なく、それが気になって寝付けないことがあるけど、今日はそれとは違った気分・・・。



やっぱり眠れないし、トイレついでに総司郎さんにお茶でも・・・。



「総司郎さん、コーヒー淹れたんだ・・けど・・・。」
仕事をしてる時って、気が散らないように気を使うんだけど、今は気を使わなくていいみたい。

でも別の意味で気を使わないと・・・。
体が資本なんだから、風邪でも引かれたら・・・。
「総司郎さん、こんなところで寝たら風邪を引くわ。」
「・・・・・。」
仮眠なのかしら。
よく眠ってるように見えるけど・・・。
「総司郎さん、起きて。
 ちゃんとベッドで寝なきゃ・・・総司郎さん。」
「・・・・・。」
私がベッドに連れて行くわけにもいかないし・・・。
「総司郎さん、ねぇ総司郎さん。
・・・・・総ちゃん・・・?」
「ぅん・・・瀬奈?」
やっぱり・・・。
「ごめん、里加子だったのか・・・。」
「こんなところで寝たら風邪を引くわ。」
仕事を口実に、ここで瀬奈くんを待っていたのね・・・。
「一段落したら寝るから・・・。
 コーヒーありがとう。」
「・・・ん。」
私も・・・由奈も・・・瀬奈くんの代わりにはなれないわ・・・。










大型連休も終わって、平穏な日々が戻ってきたと思ったら、連休中おざなりになっていた掃除なんかがたまっていて、結構忙しいわ・・・。
瀬奈くんが使っていた布団も干さなきゃ。

由奈も手がかからないようになったとはいえ、毎日家にいられると変に疲れるわ・・・。
そりゃ幼児の頃は毎日家にいたけど・・・。
でも学校へ行きだすと、家にいないのが日常になってる。



そろそろお昼ご飯の用意しないと・・・。
サラリーマンの奥さんなら、旦那さんのお昼の心配なんてしなくていいのに・・・。
総司郎さんに不満があるわけじゃないけど、でも“何が食べたい”とか“おいしい、まずい”なんてことも言ってほしいのに・・・。

「総司郎さん、お昼何食べたい?」
「ん〜?別に何でもいいよ。」
ほらね。
「何でもいいって言われても・・・。」
「里加子の食べたいものでいいよ。」
何も食べたくない、って言ったら、同じように食べないのかしら。
「おそばでいい?」
「いいよ。」
総司郎さん、おそばはあまり好きじゃないくせ・・・。
「里加子?里加子!?里加・・・。」
総司郎さんの声が、だんだん遠ざかってく・・・。







「・・・ぅ・・・っん・・・。」
「里加子・・・?」
う・・ん・・・。
総司郎さん?ここ・・・。
私・・・倒れたんだっけ・・・?
「私・・・。」
「気分はどう?
 自分の名前、わかる?」
「大丈夫よ・・・。」
見たことのない・・・無機質な天井・・・。
「ここは・・・病院?」
「うん、里加子は何でも一生懸命こなそうとするから、疲れがたまってるんだよ・・・。
 ここでゆっくりするといいよ。」
ゆっくり・・・て・・・。
「私、入院・・・するの?」
「何も心配しなくていいよ。
 家のことも由奈のことも・・・ちゃんとするから。
 もちろん里加子自身のことも心配しなくて大丈夫。ただの過労だよ。」
「でも・・・。」
「考えごとばかりしていると入院が長引くよ?」
「・・・ん。」



入院しないといけないのかぁ・・・。
入院なんて由奈を産んだ時以来だわ。
病気での入院は初めて・・・。

総司郎さんは家のことは心配しなくていい、って言ってたけど気になるわ。
布団は干しっ放しで運ばれて来たんだし、お風呂も洗剤撒きっ放し・・・。

メールしておこう・・・。










あれからもう10日も経ってるのに、まだ退院できないのかしら。

「里加子、気分はどう?」
「ママ、早く良くなってね。」
「もうすっかり元気よ。まだ退院できないの?」
寝てばかりで退屈だし、いくら総司郎さんが完璧でも、やっぱり家のことが気になるわ。
「この前の検査結果が出たら帰れるよ。」
「うん・・・。」
入院したついでだからって、血液検査だの脳波だの、やたらあちこち検査されたのよね。
「ママがいなかったら淋しい・・・。」
「ママも由奈がいないと淋しいな。」
そうよね、しっかりしているとは言ってもまだまだ子供だもの、淋しくて当たり前ね・・・。
「里加子・・・。
 退院したら、久しぶりに由奈と3人で旅行に行こうか。」
「う、うん・・・。」
「わ、行きたい!!
 ママ早く退院してね!!」
「うん。」
総司郎さんが旅行に行こうなんて珍しいな・・・。
それに冬休みじゃなくて、退院したらすぐみたいな言い方・・・。
由奈は学校だってあるのに・・・。
私・・・もしかして重病・・・なのかも・・・。












その後、何事もなく平穏無事なまま年が明けた。
私が倒れる前よりも更に、総司郎さんは気を使ってくれている・・・。







暫くしてまた倒れてしまった・・・。





今度は長くなるのかなぁ・・・。
総司郎さんも・・・お母さん達も、私の病気のことは過労だって言って、何も話してくれないけど、もしかして・・・やっぱり重病で・・・不治の病なんじゃ・・・?

聞きたいけど、でもみんな平静を装ってるんだから、私も平静を装わないと・・・。

でも本当は聞いてみたい。
もし・・・不治の病だったら悔いのないように生きたいわ・・・。

そんな取り留めのない思いが、私の中でぐるぐる回っている・・・。







入院してからずっと点滴を打ってるけど、過労だけじゃこんなに毎日点滴なんて打たない・・・。
第一私、過労になるほど働いていないわ。そんなにひ弱じゃないし。
もし過労なら、総司郎さんが先に倒れるはずよ。



「総司郎さん・・・私・・・。」
「ん?」
やっぱりダメ・・・。
ずっと隠してくれているのに、“このまま死ぬの?”なんて聞けない・・・。
「私、家のことが気になって早く退院したいわ・・・。」
「心配しなくていいって。
 瀬奈が・・・瀬奈の勤めていた会社が倒産しちゃって、今は無職なんだ・・・。
 それで時々家へ帰って来て、色々手伝ってくれてるし・・・。」
一生懸命平静を装ってくれてるけど、瀬奈くんの話をする時は嬉しそう・・・。

「総司郎さん、私は・・・それに由奈も・・・瀬奈くんの代わりにはなれなかったわね・・・。」
「何を・・・言ってるの?」
総司郎さんは自分に甘えて頼ってほしかったんだわ。
私は甘えるのも頼るのも苦手だった・・・。
それが、私が総司郎さんに愛されてないんじゃないかって思う、原因の一つだったのかも・・・。
もっと早くに気付いていれば、違う生活があったのかな・・・。

「だって・・・総司郎さんは瀬奈くんにだけよ・・・自分の感情を見せてるのは・・・。」
これもそう・・・。
総司郎さんは瀬奈くん以外には二、三歩引いて接していたわ。
「里加子・・・最近変だよ?
 入院して気分が滅入ってるのかな・・・。」
「そうかもね・・・。
 疲れたわ。総司郎さん、もう帰って。」
「・・・わかった。
 また明日、今度は由奈を連れて来るよ。」

総司郎さんは微笑むような表情を浮かべていたけど、きっと呆れていたんだ・・・。

あんなこと言うつもりじゃなかったのに、病院にいるとすることがなくて、いろんな思いが頭をよぎる。
時間も持て余すほどあるから、自分を見つめなおすこともできる。

12年前、バレンタインに告白した時は、まさか受け入れてもらえるなんて思ってなかったから、すごく嬉しくて、舞い上がっていて何も考えていなかった・・・。
その後由奈を妊娠して、育児に追われて、自分のことも・・・総司郎さんのことも考える余裕なんてなかった。

思い起こしてみればお付き合いを始めた頃から、総司郎さんはどこか醒めたところがあった。
でもそれは誰に対してもそうだと思っていたから・・・。

それが瀬奈くんだけは違っていたのよね・・・。
総司郎さんは“子供だから”って言ってるけど、由奈に接する態度ともちょっと違う・・・。



 


 



「ママ、お見舞いに来たよ!!」
「由奈は元気ね。
 寒くない?風邪は引いてない?」
「うん!!大丈夫だよ。」
「里加子さん、お久しぶり。思ったより元気そうで安心した。
これお見舞い。里加子さんガーベラの花好きだったでしょ?」
「瀬奈くん・・・ありがとう・・・。」
でも私が本当に好きなのは、花束に必ずと言っていいほど添えられているカスミソウなの・・・。
かわいい花なのに、いつも他の花の引き立て役ね・・・。
「由奈、パパの言うことちゃんと聞いてる?」
「うん、聞いてるよ。
 ママは何も心配しないで、病気を治すことだけ考えて、早く良くなって帰ってきてね。」
「そうね・・・。」



「瀬奈、由奈を連れて先に行ってて。」
「わかった。
 里加子さん、また来るね。由奈、行こう。」
「ママ、バイバイ〜。」

「里加子、瀬奈が無職だってのはこの前話したよね。
 だから家に戻って来てもらおうと思ってるんだけどいいかな?」
「どうして・・・そんなこと私に相談するの?
 瀬奈くんは総司郎さんの子供なんだし、家族なんだから相談することでもないでしょう?」
ましてや勘当したわけでもないのに・・・。
「そうだね・・・ありがとう・・・。」

「今日は久しぶりにみんなの顔が見れてうれしかったわ。ありがとう。
 でも賑やかだったから疲れたの・・・。少し眠るわ・・・。」
「うん、おやすみ。」
そう言ってキスしてくれた・・・。
キスなんて何ヶ月ぶりかしらね・・・。
総司郎さんは優しかったけど、結婚してからずっと夫婦生活は淡白だったわ・・・。
「総司郎さん・・・自分に正直に生きてね?」
「里加子、急にどうしたの?」
「何でもないわ・・・。
 由奈達が下で待ちくたびれてるわ、早く行ってあげて。
 今年はインフルエンザも流行ってるでしょう?ここは病院だもの、そういった患者さんも大勢いるわ。
 うつったら大変よ。」
「ん・・・。
 里加子も気をつけてね。また来るよ。」



その日がみんなを見た最後だった。
総司郎さん・・・私は幸せだったわ、ありがとう。


2005年11月19日(土) 16時50分30秒 公開
■この作品の著作権は如月 深雪にあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
『BE WITH YOU』の続きです。本編が途中で路線変更してしまったために、里加子さんにはかわいそうな人生を歩んでもらう結果に・・・。


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