日常茶飯事<next>番外編−BELOVED〜日常茶飯事<next>−

―――――自分に正直に生きてね―――――



それは里加子から聞いた最期の言葉。



里加子に気付かれていたのかな・・・。
俺は瀬奈が好きだけど、でも瀬奈はそっちシュミじゃないと思うんだ・・・。
できれば瀬奈には、俺の想いなんて知られたくない。このままずっと“家族”で“親子”でいけたら、と思う。



死んだすぐより、葬儀が終わってからの方が悲しいって聞いてたけれど、本当にそんな感じだ。
里加子が死んだ時は葬儀の準備に慌(あわただ)しくて、何も考える余裕なんてなかったけれど、葬儀が終わってみれば、なんだかぽっかりと穴が開いたみたいで、何もする気になれない・・・。
何気ない、些細なやり取りですら、昨日のことのように思い出されて、自分でもよくそんなに細かいことを覚えていたものだ、と感心する。

それに俺よりも由奈の方が何倍も悲しいはずなのに、俺達を気遣って普段と何も変わらないように、気丈に振舞っている・・・。





「はぁ〜〜〜・・・。」
連載してた分も一段落したし、次の連載の取材も兼ねてちょっと日本を離れようかな・・・。
由奈を置いて自分だけ現実逃避するみたいだけど、暫く独りになりたい・・・。
これからのことも、瀬奈のことも・・・ゆっくり考えて答えを見つけたい・・・。
うん、そうしよう。





「総ちゃんもコーヒー飲む?」
「なんだ、まだ起きてたのか。」
キッチンへ来たら瀬奈がコーヒーを淹れていた。
「まだって・・・まだ10時だよ?
 子供じゃないんだからそんなに早く寝ないよ。」
「ああ・・・。」
まだそんな時間だったのか・・・。

「総ちゃん・・・。
 その・・・里加子さんのこと・・・何て言っていいかわからないけど・・・。」
「うん、今まで通りでいいんだよ・・・。
 変に気を遣われたくない・・・。
 由奈にも今まで通り接してくれればいいんだ・・・。」
瀬奈のことは好きだけれど、それとはまた違った形で里加子を愛していたし、今後もその気持ちは変わらない。
位置づけをすることではないけれど・・・だけど、どの気持ちが一番なのか・・・いろんな想いが頭を巡る。

振り返ってみれば自分の恋愛経験の少なさも、里加子に俺の瀬奈への想いを気付かれてしまった原因かな・・・。

「瀬奈、もっと早くに言うつもりだったんだけど、家へ戻っておいで。」
「そんな、急に言われても・・・。」
「今週中に戻って来て。
 来週から俺は取材で出かけるから、由奈の世話をする者がいない。
失業中だし、ホームレスになりたくないだろ?
 俺が雇ってやる。」
当初は勇一郎に面倒を見てもらおうかと思ったけど、アイツに借りは作りたくないし、瀬奈を家へ連れ戻すいい口実になる。
「取材ってどこへ行くの?どれくらいで帰ってくるの?」
「フランスへ行く・・・。
 期間はわからない・・・。1週間か10日・・・もっと長くなるかも・・・。」
「フランス!?って、ヨーロッパの!?
 1週間くらいならともかく、それ以上なんて困るよ!!」
「そのフランスだよ・・・。
困ると言われても、もう航空券もホテルも予約したんだ。
それに、俺は24からお前の面倒を見た。
 お前は26なんだから、あの時の俺より年上だ。」
「そんな・・・。
 僕に由奈の面倒見るなんて無理だよ!!」
「瀬奈なら・・・一番由奈の気持ちをわかってくれるかと思ったんだけどな・・・。」
瀬奈が両親を亡くしたのも、ちょうど由奈と同じ頃だ・・・。
「僕は・・・両親が死んだ時って、実感がなくて悲しくもなかったから、里加子さんをすごく慕ってた由奈の気持ちなんてわからないよ・・・。」
「大丈夫だよ、由奈は瀬奈に懐いてるんだから。」
由奈は頭のいい子で、相手に自分を合わせるところがあるんだけど、瀬奈には本音を見せてるんだよね。
俺には一歩引いて接してるくせに。
「由奈が僕みたいになっても知らないよ!?」
「それはそれで構わないよ。
 教育方針も瀬奈に任せる。」
「そんなの任せないでよ!!
 由奈は総ちゃんの子供で、僕の子供じゃないんだよ!?」
「じゃあ方針は今まで通りでいいよ。
あの頃の自分を思い出せばわかるよね?
約束事を守らなかったら、お尻を叩いてくれて構わない。
そのかわりその分、瀬奈もしっかりケジメをつけてね。」
「どっちにしても責任は僕についてくるじゃない!!」
「できるだけ早く帰国できるようにするからさ、頼んだよ。
 さー、風呂入って寝よう!!」
難しく考えるのはやめよう。
恋愛なんてなるようにしかならないんだし、強引にするもんじゃないしね。
「待ってよ!!総ちゃん!!」
「何?瀬奈。
 俺と一緒に風呂に入りたい?」
「違・・・もう!!総ちゃん!!」
瀬奈との関係が壊れないように、ゆっくりと様子を見ながらしていけばいいんだ。










「じゃあ行ってくるよ。
 由奈のこと、よろしく頼むよ。」
「本当に・・・できるだけ早く帰ってきてよ?」
「うん。」

荷物の少ない瀬奈は動きやすいらしく、2日後には帰ってきてくれた。


2005年12月02日(金) 11時29分31秒 公開
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■作者からのメッセージ
今更ですが<next>のプロローグを・・・。スパも入ってない『BELOVED』から『next』へのつなぎです。


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