日常茶飯事<next>33
今日は確か進来社の締切日だったよね。
総ちゃんにしては珍しく、原稿がまだ仕上がってないんだ。
だからって僕に手伝えることなんてないんだけど。



由奈は学校へ行ったし、洗濯も干したし、掃除も一通り終わったし・・・。
さ〜〜〜、ゲームをしようっと!!
由奈より先に進んで自慢してやるんだ。





「おはようございまーす。」
あ、進来社の担当は小倉だったんだ・・・。
「まだ上がってないから待っていてって。」
「えっと・・・ここで待っていればいいの?」
リビングの入り口に佇(たたず)んだまま小倉が聞いてきた。
「うん、適当に座ってくれたらいいよ。」
「そう、じゃあ待たせてもらうわ。
 原稿いつ頃上がるかわかる?」
「お昼くらいには、って言ってたよ。」
「そう、ありがとう。」
ゲームを続ける僕を尻目に、小倉は編集部や印刷会社と打ち合わせを始めた。

話し声が耳障りでゲームに集中できない。
でも小倉は仕事だし、文句なんて言えないけど・・・。
こんなことなら応接間に通せばよかった・・・。



静かになったけど打ち合わせは終わったのかな。
「一段落したの?コーヒー入れようか?
 砂糖とミルクは?」
僕もちょっと休憩したいし。
「ありがとう、両方いらないわ。」
ブラックで飲むのか・・・。苦そう・・・。



「ねぇ、毎日ゲームして遊んでるの?」
「別に遊んでばかりいるわけじゃ・・・。」
毎日やってるのは確かだけど、家事だってやってるんだから。
そりゃ、週末しか働いてなくて遊んでるように見えるけど。
働いてるのも侑也の店で、自活できるほどの稼ぎもないけどさ。
「あ、厭味で言ったんじゃないよ?」
十分厭味に聞こえるんだけど・・・。
でも、ずっと苦労してる小倉から見れば、僕は随分恵まれた環境で、何の苦労も知らずに生活してるよね・・・。

総ちゃんの原稿、まだ上がらないのかな。
なんだか間が持たない・・・。
「原稿の進み具合を見てくるよ。」
「う、うん、ありがと・・・。」
とにかく小倉から離れたい・・・。


「総ちゃん、進み具合はどお?」
見に来たものの、仕事中の書斎って入りづらいんだよね・・・。
「小倉さんには申し訳ないけど昼過ぎになるよ・・・。」
えっ!!
「そうなの・・・?
 じゃあ一回帰ってもらう?」
お昼過ぎまで小倉と一緒にいるなんて嫌だ・・・。
嫌いとかそんなじゃないけど、なんか気分的に嫌・・・。
「何言ってんの。
 待ってもらえばいいじゃない。
 お昼の用意してあげるんだよ?」
総ちゃんはパソコンに向かったまま淡々と言った。
「う、うん・・・わかった・・・。」
確かに、今まで次の日に持ち越しにならない限り、担当さんには待ってもらってるけど・・・。



お昼・・・出前を取ろうかな・・・。
「小倉、原稿上がるの昼過ぎになるって。
 それで出前を取ろうと思うんだけど何食べたい?」
僕としてはピザがいいんだけどな・・・。
「わざわざ取らなくていいよ。いつもデリバリーなの?」
「いつもじゃないよ。」
まさか毎日出前で済ませてると思われてるとか!?
「なんなら私が作ろうか?キッチン借りていい?」
「い、いいけど・・・。」
「じゃあキッチン借りるね。
 森崎はゲームの続きやってていいよ。」
「・・・うん・・・。」
続きをできて、小倉とも距離を置けるのは嬉しいけど・・・。







「ありがとうございました。」
予定通りお昼過ぎに原稿を受け取ると、小倉は出版社へ帰っていった。

僕はキッチンで総ちゃんの食事を温めている。
「お昼は食べたの?」
食器洗い機に目をやりながら総ちゃんが聞いてきた。
「うん、小倉が作ってくれた。」
人に作ってもらった料理を食べるのって久々で、おいしかったなぁ。
小倉って意外と料理上手だったんだ・・・。
「瀬奈・・・小倉さんに何をさせてるの!?
 小倉さんは編集者として、仕事で原稿を取りに来てるんだよ!?」
「うん・・・。
 それくらいわかってるよ。」
「わかってるのにどうして仕事に関係のないことをさせるの!!」
「だって・・・出前を取ろうとしたら、自分が作るって・・・。」
そんなにいけないことだったの!?
「で、その間瀬奈は何をしていたの?」
「え、え・・・そのぉ・・・ゲーム・・・。」
適当な言い訳が思いつかない・・・。
言い訳をしたところで多分・・・絶対バレるだろうけど。
「お客さんにご飯を作らせておいて、自分は遊んでいたの!?」
「だって小倉が作るって言うから・・・。」
「バカッ!!」
「うわっ!?」
総ちゃんの前に温めたご飯を出した瞬間、腕を引っ張られて膝に引き倒された。

「待ってよ総ちゃん!!」
総ちゃんは僕の腰を押さえると、手際よくGパンとパンツを引き下ろした。
「何を待つの?」
何ってお仕置きに決まってるじゃない。
「ひゃ・・・やだ・・・放して・・・。」
お尻を撫でられるのって、突然叩かれたりする前触れで嫌な感じがする。
「言い訳なんて聞かないからね!?」
「そんな・・・だって小倉が・・・痛いっ!!」
ううぅ・・・やだぁ。
「言い訳は聞かないって言ってるでしょ!?」
「やめてよ、総ちゃぁ〜ん・・・。」
「あんまりバタバタするとテーブルにぶつかるよ?」
そうだよ・・・。
子供じゃないから椅子に座った膝に乗せられると手足が床に着くし、目の前に床が迫ってくる。

「いったぁいっ!!
 総ちゃん、やめて・・・。
 やだ・・・ごめんなさいっ!!」
小倉にご飯を作ってもらっただけで、どうしてお仕置きをされなきゃなんないの!?
「“ごめんなさい”じゃないよ。
 もう少しよく考えて行動しなさい。」
「わかったよ・・・。
 わかったからもうやめてよ。」
「瀬奈はそういうところが反省してないの!!」
そんな・・・。
「総ちゃ・・・痛ぁいっ!!」
「言っとくけど今日はお仕置きだけだからね!?」
総ちゃんのことだから期待はしてなかったよ・・・。
でも、総ちゃんだって本当はしたいはずなんだ・・・。

「った・・・痛い!!
 嫌だ・・・もうやめてってば!!」
「反省してないからダメ。」
「してるよっ!!」
お尻も痛いけど、もう子供じゃないからこの体勢もキツイんだよね・・・。
「本当に反省してるからやめ・・・いったぁい!!」
総ちゃんは僕の言葉を遮るように、テンポを速めてお尻を連打した。





やっと放してくれたのは随分時間が経ってからだった・・・。
「いっ!!痛・・・。」
お尻が痛くてGパンを穿けない・・・。
他のに着替えよう・・・。
「・・・総ちゃん、それ温め直すよ・・・。」
すっかり冷めちゃってご飯やおかずの表面がパサついている。
「このままでいい・・・。
 俺は瀬奈の作ったご飯が食べたかったよ・・・。」
「う、うん・・・。
 夕食はちゃんと作るよ・・・。」
思いがけない言葉で、嬉しいようなくすぐったいような、複雑な気分だ・・・。
「それと、明日は何もないからしよう・・・。」
「・・・・・。」
「聞こえなかったの!?」
「う、ううん!!聞こえたよ!!
 明日ね・・・。うん、大丈夫!!」
明日はお仕置きされないようにしっかりしなきゃ。


2006年05月04日(木) 21時02分54秒 公開
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