日常茶飯事<next>34
昨日、おばあちゃんから大量の野菜が送られてきた。
いくら冬野菜は日持ちがするからって、3人家族なのにこんなにいらないよ・・・。
それに送料の方が高くつくんじゃないかな。
だからって捨てるわけにもいかないし、当然ゆうちゃん家にも送ってるしなぁ。
暫く野菜料理ばかりだね・・・。



とりあえずは総ちゃんの好きな大根のお漬物作って・・・。
お漬物と言っても糠(ぬか)漬けとかじゃなく、砂糖とお酢をメインに使ったサラダ感覚のお漬物で、まだ僕が中学生だった頃、おばあちゃんにレシピを教わって、これだけは自信がある料理なんだ。



今日の晩ご飯は“おでん”と“白菜のシチュー”を作ろうかな。
総ちゃんは打ち合わせで出かけていて、きっと遅くなるだろうから、ゆっくり作ろう。
いくら遅くなっても、僕の料理が食べたいからって、外食はしてこないんだ。







「ただいま〜。」
由奈だ。
「おかえり・・・。
 晩ご飯は今作ってる最中なんだ。もうちょっと待ってて。」
「パパは?」
「総ちゃんはまだ帰ってないよ?何か用?」
僕には言いたくないことかな。
でも由奈は敢(あ)えて僕には言わないけどね。
「なーんだ・・・。
 まだならもっと遊んでくればよかった。」
「それで前にお仕置きされたくせに・・・。」
「瀬奈ほどじゃないよ。」
確かに僕は、毎日のように門限を破ってお尻を叩かれてたけどさ。
なんだってあんなに叩かれてたのに、懲りずに門限破りをしてたんだろ・・・。
やっぱり・・・マ・・・いや、そんなことはない。
総ちゃんが変なこと言うから・・・。

でも由奈が門限を破ったって、僕は由奈をお仕置きする気にはならないけど・・・。
この家に帰って来たすぐの頃は総ちゃんがいなかったし、僕へのお仕置きも再開されてなかったから、由奈をお仕置きできたけど、今は僕もお仕置きされる身だから、やりたくないんだ。
「まだまだ出来そうにないから、先にお風呂に入っちゃいなよ。」
由奈だって僕とキッチンにいたくないだろうし。
「うん、でもパパと入りたいな・・・。」
「だったら先に宿題すれば?」
「ふん・・・瀬奈じゃないんだから、帰ってすぐにやったよ。」
ゆ、由奈のヤツ、今鼻で笑わなかった?

「ところで晩ご飯のメニューは何なの?」
「“おでん”と“白菜のシチュー”だよ。」
ちょっと変な組み合わせだけど、もらった野菜の中でも、特に大量にある白菜と大根を使わないと。
「あまり好きじゃないメニューばっかり・・・。」
そんな、あからさまに嫌そうな顔をしなくても・・・。
「おばあちゃんが寒いのに、田んぼへ出て丹精込めて作ってくれた野菜だよ?
それをせっかく送ってくれたんだから、そんなこと言わないでさ・・・。」
「僕は野菜のことを言ってるんじゃなく、メニューのことを言ってるの!!」
あ、そっか・・・。
「僕、明日の予習してくる。」
「う、うん。出来たら呼ぶよ。」

予習か・・・すごいな。
僕なんて宿題をするだけでいっぱいいっぱいだったもんな。
それどころかたまに宿題を溜め込んでて、総ちゃんにお尻を叩かれたし・・・。





よし、こんなもんかな。
シチューのジャガイモも煮崩れしないで出来上がってよかった。
“メークイン”なら煮崩れしないけど、水分が多くてあまり好きじゃないんだ。

「由奈、おいしくない?」
さっきからほとんど食べてないけど・・・。
「だっておでんに卵が入ってないんだもん・・・。
 シチューだって白菜ばっかり・・・。」
「アサリが入ってるよ?」
「僕、魚介類は好きじゃない!!
 今日のご飯、野菜ばっかりだからもう食べない!!」
確かに野菜系だけどさ・・・。
「寝る頃になっておなか空いたって知らないからね!?」
総ちゃんがいないとワガママばかり言うんだから。
「いいもん!!」
「あっ!!?」
何もひっくり返すことないじゃない!!
「由奈っ!!」
おでんとシチューの両方をひっくり返して、キッチンを飛び出していった。
幸い食器は割れなかったものの、床に飛び散ったシチューがヒサンだ・・・。

片付ける前に食べてしまおうっと。





「ただいま。」
「あ、おかえり。」
床を拭いてたら、総ちゃんが帰って来たことに気付かなかったよ・・・。
「床、どうしたの?」
「由奈がシチューをひっくり返したから・・・。」
思ったより広範囲に飛び散っていて、拭いたつもりが残っていたり。
「由奈はどこにいるの?
 そんなの本人にやらせればいいんだよ。」
「多分、自分の部屋・・・。」
また予習でもしてるのかな。
「呼んでくる。」



総ちゃんに連れてこられた由奈はしぶしぶ床を拭いて、雑巾を絞りに洗面所へ行った。
「総ちゃん、ご飯食べるんでしょ?」
「うん、由奈はキチンと食べたの?」
「うん・・・どうだろう?
 野菜ばっかりのメニューだから嫌だ、ってひっくり返したからね・・・。」
「え!?由奈の不注意じゃなく故意になの!?」
「う、うん・・・。」
「それで瀬奈は叱らなかったの!?おまけに床掃除までして・・・。
 ご飯は後で食べるよ。由奈のお仕置きが先だ!!」
あ・・・。言わない方が良かったかな・・・。
ひっくり返したのは総ちゃんが帰ってくる前だったから、お仕置きされるのがちょっとかわいそうな気も・・・。

程なくして由奈が戻ってきた。
「由奈、シチューをわざとひっくり返したって本当?」
「え・・・。
 ぅ・・・うん・・・ホント・・・。」
総ちゃんに咎められ、泣きそうになりながら絞り出すような声で答えてる。
由奈は総ちゃんの前ではすごく素直だ。
「食べたくないなら食べなくていいじゃない。それなのにわざとひっくり返して!!
おいで、お仕置きだ!!」
総ちゃんは自分の前にいた由奈を抱きかかえると椅子に座り、膝の上に横たえた。
「や、やだ・・・ごめんなさいっ!!」
「誰にごめんなさい、なの!?」
「パ、パパ・・・。」
その答えを聞いた総ちゃんは小さな溜め息をつき、由奈のズボンとパンツを引き下ろした。
「ゃ・・・やだ、やめ・・・痛いっ!!」
うわ、手形がクッキリだ。
それでも幾分かは手加減してるんだよね・・・。
「うっ・・・痛・・・やぁっ・・・あぁ・・・やだ、やだぁ。」
見てる僕だって、なんだかお尻がモゾモゾするよ・・・。

「痛ぁぁいっ!!!」
じっと耐えていた由奈だったけど、10発を越える頃には耐えられなくなったのか、足をバタバタさせたり、悲鳴に近い泣き声を上げたり。
「あぁ〜〜〜ん・・・ごめんなさいっ!!
 やだぁ痛い・・・痛いよぉ・・・あぁ〜〜〜ん。」
由奈は滅多にお仕置きをされないから、痛さにだって慣れてないんだよね。
でも・・・慣れるってのも何だか変だけどさ・・・。

「痛い、痛・・・あうっ!!」
音からして今のはかなり痛かったと思う・・・。
「由奈・・・どうしてお仕置きされてるのかわかってる?」
一旦手を止め、由奈に問いかける。昔から変わらない総ちゃんのお仕置きの仕方だ。
「・・・ぅ・・ん・・・。」
由奈は微かに頷いた。
「・・・おでんとシチュー・・・わざとひっくり返した・・・から・・・。」
「おでんも!?シチューだけじゃなかったの!?」
お仕置きが再開された。
「う・・・うわぁぁーーーん!!ごめんなさいっ!!痛いっ!!」
おでんはとっくに片付けたんだから、言わなくてもよかったのに・・・。
いつも生意気な由奈だけど、今回は少し同情しちゃう。



もう、随分長い間叩かれてるよね・・・。
「総ちゃん、それくらいで許してやったら?」
お尻も真っ赤になってるし、由奈だって少しは反省してるだろうし・・・。
「反省してないからダメだよ。」
「そんなことないと思うよ?」
だいたい由奈は総ちゃんが大好きだから、総ちゃんの手を煩わせたってすごく後悔してるはずだ。
“後悔”と“反省”は微妙に違うだろうけど。
「だって瀬奈はまだ謝ってもらってないでしょ?」
「う・・・うん・・・。」
それはそうだけど、僕は別に謝ってもらわなくてもいいんだけどな。
「ふぇぇぇっ・・・ごめんなさい・・・。
 お兄ちゃん・・・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・総ちゃん。」
総ちゃんはチラリと僕を見ると、叩く手を緩めた。

「由奈、お仕置きはこれで終わりだ。」
暫くして叩くのをやめ、膝から下ろすと涙を拭ってやった。



「由奈、おなか空いてない?
 由奈の好きなメニューじゃないけど、これから総ちゃんが食べるから、一緒に食べる?」
生意気だけど、まだまだ子供だもんね。意地張って食べられなかったのかもしれないし。
「・・・・・僕が食べる分・・・あるの?」
明日の朝食に回せるように、いつも多目に作ってるんだ。
「あるよ。食べる?」
「・・・うん。」





結局、由奈はシチューをおかわりまでした。
きっと総ちゃんと一緒に食べたかったんだろうな。


2006年06月14日(水) 20時06分04秒 公開
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■作者からのメッセージ
久々の由奈、なのかな・・・。瀬奈がやたら大人(大人だけど・・・)びてます。(笑)


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