日常茶飯事<next>35
(総ちゃん視点)





梅雨で気温の寒暖差があるっていっても、もう夏なのに瀬奈はインフルエンザで寝込んでいる。
さすがに寝込みを襲うわけにもいかずこうして家事を・・・。
家事なんて何年ぶりだろう。
でも里加子が死んで、暫くフランスへ行ってた時は自炊してたな。

「瀬奈、ご飯だよ。」
「いらない・・・。」
「何か食べないと薬が飲めないじゃない。
 プリンかヨーグルトなら食べられるでしょ。食べさせてあげるよ。」
熱でボーッとしてる瀬奈もかわいいなぁ。
「・・・プリン・・・自分で食べる。」
起き上がったのはいいけど、今にも倒れそうだ。
「無理だよ。
 食べさせてあげるから・・・。
 ほら、あ〜〜〜ん・・・。」
「・・・総ちゃんまで口開けなくていいじゃない。」
「・・・・・。」
意識朦朧(もうろう)としているくせに、そういうところはしっかり見てるんだから。
「先に何か飲みたい・・・。」
「あ、うん・・・。
 スポーツドリンクでいい?」
熱がある時は水分を補給しないとね。医者が言うにはスポーツドリンクが一番いいらしい。
「瀬奈、口移しで・・・。」
「もう!!いい加減にしてよ!!」
怒っちゃったよ・・・。やっぱり熱がある時にマズかったかな・・・。
「総ちゃんにうつったら・・・由奈にまでうつるかもしれないから、必要以上に来ないで!!」
「じゃあ書斎にいるから、何かあったら内線にかけて。」
「・・・・・。」
「ちゃんと食べるんだよ?」
念を押して瀬奈の部屋を出た。



でも、せめてもう少し熱が下がらないと、仕事が手につかない・・・。
解熱剤は朝から使ったから、8時間以上時間を置かないと次が使えないし。

瀬奈と関係を持つようになって以来、解熱剤を・・・座薬を嫌がらなくなって面白くないんだよね。
だからって、嫌がるのを楽しんでるわけじゃないんだ・・・。矛盾しているけど。

とにかくいろんな意味で早く治ってほしいな。





「ただいま!!」
「おかえり。早かったんだね。」
由奈が帰って来るのってこんなに早かったっけ?
「うん、今日は水曜日だもん。
午後の授業がないんだよ。」
あ、そうだっけ?
瀬奈に任せっきりのところがあるからなぁ・・・。
「それでね、今日は小倉くんが遊びに来るんだ。家で遊んでもいい?」
確か杏ちゃんの息子だったよね。
あえて聞かないけど、きっと瀬奈から付けた名前だ。
「いいよ。
 でも瀬奈がインフルエンザで寝ているから2階へ行ったり、うるさくしちゃダメだよ?」
「うん、わかってる!!」
「ランドセル下ろして着替えておいで。シャワーも浴びる?」
「シャワーはいい。」
今日は梅雨の晴れ間で天気が良く、外は普通に歩いていても汗が噴き出してきて、さっき近くのコンビニまで歩いただけなのに、シャツが湿っぽくなったように感じる。
「あ、パパ。
 明日もプールがあるから、これ洗ってほしい。」
「うん、じゃあ着替えた服と一緒に洗うよ。」
学校のプールか・・・。懐かしいな。

「こんにちは!!」
由奈と玄関先で話し込んでいたら、例の小倉くんが遊びに来た。
「セナ早かったね。
 僕、着替えてくるからリビングで待ってて。」
「うん、おじゃましまーす!!」
 
「・・・・・。」
「どうしたの?」
玄関から上がったまま、俺を見つめてるような・・・?
「どうして由奈のプールセットが濡れてるのかと思って・・・。
 帰りに落としちゃったの?でも見学の子はいちいち持って帰らなくてもいいのに・・・。」
「見学・・・って?」
さっき、明日もプールがあるから洗ってほしいって言ってたのは何だったの?
「由奈はプールの時はいつも見学してるんだよ。」
「いつも!?」
そんな話、由奈からも瀬奈からも全く聞いてないけど・・・。
「うん・・・。
 今日はおなかが痛かったんだって。もう大丈夫なのかな・・・。」
今は元気そうだし、朝だって一言もそんなこと言ってなかったのに・・・。
「・・・おじさんプールカードに書いたのに覚えてないの?」
「プールカード?」
ってのは何?
「プールに入るためのカードだよ。」
「えぇ〜〜〜と・・・おじさん、そのカードのこと全然知らないんだけど・・・。」
瀬奈は知ってるのかな・・・。
でも、ずっと見学だったら何か言ってくれても・・・。
「知らないの!?」
「うん、どんなカード?」
「これくらいの大きさで、プールに入るのも見学するのも家の人のハンコがいるんだよ。
 見学の場合は理由を書かないとダメなんだけど・・・。
 それにハンコを捺してあっても、カードを忘れたらプールに入れないんだ。」
小倉くんが手で示してくれたのは、ハガキくらいの大きさのカードだ。
そんなの1回も見たことがない・・・。

「あれ?セナまだこんなところにいたの?」
着替えた由奈が自分の部屋から出てきた。
「うん。」
「早く向こうへ行ってゲームやろう。」
「うん。」



「瀬奈!!」
由奈を問いただす前に瀬奈にも聞いておかないと・・・。
「・・・何?
 薬なら飲んだよ・・・。」
「しんどいところを悪いんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
「僕・・・何もしてないよ・・・?」
俺と目を合わせないのは熱のせいか?それとも何か隠してるとか?
でも今回はそんなことはどうでもいい。
「いや、瀬奈のことじゃなくて由奈のこと。」
「・・・由奈・・・?」
「うん、プールカードのことなんだけど・・・。
 瀬奈がハンコ捺してたの?」
「プールカード?
 今年からなくなったって・・・由奈が言ってたよ・・・?」
「あ、そうなの?じゃあいいよ・・・。」
「もう・・・。」
「ごめんごめん。ゆっくり養生してね。」



由奈はずっと仮病を使って、印鑑も勝手に捺してたのか!?







「由奈、小倉くんは帰ったの?」
さっき、表で見送る声が聞こえてたんだ。
「うん。」
「ちょっと聞きたいことがあるから由奈の部屋に行こうか。」
「う、うん・・・。」
由奈の背中に手を回すと、誘導するように部屋に向かった。

「学校のプールのことなんだけど、何か隠してることはない?」
部屋の床に向かい合わせに座り、項垂(うなだ)れている由奈の顔を覗き込み聞いてみる。
本人もこれからの成り行きがわかっているみたいで、既に半泣きになって涙を堪えていた。
「・・・・・ある・・・。」
やっとのことで口を開いた拍子に涙も零れ落ちた。
「それもひとつやふたつじゃないよね?」
「・・・・・ぅん・・・・・。」
比べるつもりはないけど、素直に認めるところは瀬奈とは大違いだ。

「僕・・・泳ぐの苦手だから・・・・・だから・・・ずっと見学したり・・・プールカード忘れたことにして、プールの授業・・・ずっとやってなかった・・・。」
由奈はヘンにプライドが高いからなぁ。
「プールカードがあることも隠してたでしょ。
それにハンコも自分で捺して、理由も自分で書いてたでしょ?」
「・・・ぅん。
 見学したことがばれないように・・・帰りに公園の水道で水着とか濡らした・・・。」
うまくやってたから、瀬奈も俺も今まで気付かなかったんだよな。
「プールの時はいつも嘘をついていたんだね。」
いつも平気で嘘をついていたのかな・・・。
「う・・・ふぇぇ・・・ごめ・・・ごめ・・なさい・・・。うわぁぁーーーん!!」
謝ると同時に声を上げて泣き出した。

「お仕置きをするからこっちへおいで。」
正面に座っている由奈の腕を掴み、膝に引き倒す。
「や・・・やぁぁ・・・。」
「悪いことをしたんだから、お仕置きをされるのは当たり前でしょ。」
今まで見破れなかったこっちにも非はあるかもしれないけど、嘘に嘘を重ねてたんだから、それなりにお仕置きをしなきゃ。
「ふぇぇ・・・やぁだぁ、ごめんなさ・・・嫌ぁっ!!」
ズボンとパンツを引き下ろした途端、激しく抵抗を始めた。
「手をよけなさい!!」
「痛っ!!」
1発目はお尻を庇っていた手ごと叩いたら、あっけなく手をよけた。

「ごめんなさい・・・。
や・・・ぅっく・・・痛い・・・。」
由奈のお仕置きをすることは少ないから、あまり厳しくするのは何となく気が引ける・・・。
瀬奈はやりやすかったのになぁ。
「っん・・・やだぁ・・・パパ、やめて・・・痛ぁい!!」
まだちょっとしか叩いてないよ・・・。
「ダメだよ。
いっぱい嘘をついてみんなを騙していたんだからね。」
俺や瀬奈だけならともかく、小倉くんをはじめ、心配してくれた人だっているだろうに。

「あぁーーーん!!ごめんなさぁいっ!!」
床に座ってると叩き辛いな。
由奈も手足をバタバタさせたら床にぶつかって痛いみたいだし。
「や・・・やぁぁ!?」
由奈を抱えたまま立ち上がりベッドに腰掛けた。

「嫌・・・痛いっ!!
 やだぁ・・・ごめんなさい・・・パパァ!!」
こっちの方が叩きやすい分由奈も暴れやすいみたいで、膝から逃れようと手足をバタバタさせている。
「大人しくしなさい。」
足を組み、由奈のお尻を持ち上げた。
「いったぁいっ!!
 やぁ・・・やだぁごめんなさい!!パパ・・・やめて!!」

そろそろお尻も真っ赤になってきたし・・・。
「反省してる?」
「してる・・・してるよ!!
もう仮病使ったり・・・勝手にハンコ捺したりしないからやめて!!あぁぁーーーん!!」
もう少し叩いて終わってやるかな。



「あぁーーーん!!ごめんなさぁい!!
 痛い・・・やだぁ・・・痛いぃーーーっ!!」
こんなに長く叩いたのは久しぶりだよね。
「もう絶対しちゃダメだよ!?」
「うっ・・・うん・・・ごめんなさい・・・。」
叩くのをやめたから安心したのか、由奈も手足をバタバタさせるのもやめた。

「もうすぐ夏休みだし、スイミングスクールに通ってみる?」
由奈を膝から下ろし、涙を拭ってやる。
「・・・ぅ・・・うん・・・。」
あまり乗り気じゃないみたいだね・・・。
「嫌なら夏休みの間だけでもいいんだよ?」
「うん・・・。
 じゃあ息継ぎできるようになったらやめていい?」
「いいよ。」
息継ぎができないから苦手なのか?







その後、夏休みからスイミングスクールに通い始め、息継ぎが出来るようになったら水泳が楽しくなったみたいで、2学期になってからも通い続けている。


2006年07月26日(水) 16時26分53秒 公開
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