日常茶飯事<next>36−1
「おはよう瀬奈。
 インフルエンザはもう大丈夫?」
今日は金曜日でバイト日だから侑也が迎えに来た。
「うん。もうなんともない。」
先週はインフルエンザが完治してなくて休むことになったけど、今日からはまたお世話になる。
「今日はごく親しいお得意様だけを招待して貸し切りなんだ。」
「え?そうなの!?」
貸し切りなんてするんだ・・・。知らなかったな。
でも何のために貸し切り?
「ねぇ、貸し切りにして何するの?」
「それは後で言うよ。」
「うん・・・。」
今言えないようなこと?





「おはようございます。」
今日はお得意様だけで、慣れた相手だから粗相をしないように気をつけなきゃ。
「おはよう!!
 セナ、インフルエンザはもういいの?」
智也くんはいつも元気だなぁ・・・。
「うん、いいから出てきたんだよ。」
「それはそうだろうけど・・・。」
「こういう場合は“心配してくれてありがとう”って言うんだよ。
 間違ってもお客さん相手にそういう言い方はするなよ!?」
「あ、うん・・・。ごめん・・・。」
侑也が間に入ってくるなんて珍しいな。

そういえば“お客さん相手に・・・”って、お客さんも僕がインフルエンザだったって知ってるのかな。
「そうだ、セナにお見舞いが届いてるんだよ。」
ってことは、やっぱり知られてるのか。
「誰から?」
今までずっと店に放置してあったわけ!?
「杏奈さん。」
「小倉から!?」
しかも家を知ってるのに、わざわざ店に!?
「中身、何か怪しい物じゃないの?」
「中身はゼリーだよ。
杏ちゃんはセナのこと、すごく心配してくれてたんだよ!?」
何もそんなにムキにならなくても・・・。
あ、小倉は一応、智也くんの身内になるからか・・・。
「ゴメン・・・。」
僕の家は侑也の近所なんだし、帰るついでに持って来てくれればよかったのに。

「智也、今日が最後なんだから粗相しないようにね。」
「大丈夫ですよ〜。」
え?
「智也くん、やめちゃうの!?どうして!?」
「うん、ワケは後で話すよ・・・。」
聞いちゃいけない、言えないような理由なのかな。







「こんばんは。」
げっ!!小倉もお得意様のメンバーなの!?
「い、いらっしゃいませ。」
「インフルエンザはもう大丈夫なの?」
「うん、完治したからこうやって・・・。」
「瀬奈っ!!」
やば、侑也・・・。
「・・・じゃないや・・・。
 心配してくれたんだって?ありがとう・・・。」
「お客様にタメ口たたくんじゃない!!」
「う・・・はい・・・。
 あ、お見舞いありがとう・・・。家に持って来てくれたらよかったのに・・・。」
「だって私はセナくんの客であって、それ以外には関係なんてないもの、家に行く理由なんてないわ。」
客としてお見舞いをくれたのか・・・。
「そうだよね・・・。」
確かにそれ以外には小学校の同級生だったとか、総ちゃんの担当編集者とか、由奈の友達のお母さんとかであって、僕と直接的には関係ないよね。
「杏奈さん、席に案内しますね。」
「ありがとう、智也くん。」

「セナくん、お久しぶり〜。」
「いらっしゃいませ・・・。」
うっ!!セイをくれたオバサン・・・。僕、この人苦手なんだよね・・・。
「あ、智也くん、これお花。
 智也くんが辞めちゃうと淋しくなるわぁ・・・。」
「ありがとうございます。
 僕も淋しくなるな・・・。時々は僕のことも思い出してくださいね。」







「ねぇ、従業員が辞めるたびに貸し切ってお別れ会するの?」
僕の隣に座っているベテランの将輝さんに聞いてみた。
「あれ?セナは何も聞いてないの?」
「え?うん・・・。
 智也くんが辞めるとしか聞いてないけど・・・。」
「智也は店長と結婚するんだよ。」
へ?
「け、結婚!?」
それも“店長”って、侑也と!?
「うん・・・あ!!セナ、バカ!!」
「あっ!!」
将輝さんの一言にびっくりして、注いでいたワインを溢れてもなお注いでいた・・・。
「瀬奈・・・。ちょっと・・・。」
侑也は立ち上がると奥の事務所を指差した。
「は、はい・・・。」
もしかしてお仕置き・・・?



「ズボンを下げて机に手をついて。」
物差しを手に侑也が急かす。
「待ってよ・・・。
 総ちゃんに連絡するって条件だったじゃない・・・。」
「うん、総司郎さんの分は残しておくよ。」
そんな・・・。
「いつもそうじゃない・・・。」
「俺と瀬奈の仲なんだから、細かいことは気にすんなって。」
「するよっ!!」
「忙しいんだから早くお尻出して。」
「やだっ!!」
暫く休んでた分、お尻を出すのが余計恥ずかしい・・・。
「しょうがないな。
 今日は特別に諦めてやるよ・・・。」
諦めるって何!?
「用は済んだし、席に戻っていいよ。」
「う、うん・・・。」
いつもは妥協してくれないのに、あっさり妥協されると何だか変な感じ・・・。
「あっ!!
 さっき将輝さんに聞いたけど、智也くんと結婚って何!?」
「ああ・・・。
 まだ言ってなかったっけ・・・。」
「侑也が後で言うって言ったから、まだ聞いてないよ!!」
ずっと秘密にしてるつもりだったとか!?
「ちょっと前から大樹と付き合いだしたんだ。」
大樹ってのは智也の本名だ。
「店の子とは恋愛ができないからね。
 それで大樹に辞めてもらうことにした。
 それに先週末からは家を出て一緒に暮らしてるんだ。」
「えっ!!」
僕に内緒で2人の関係はそんなに進んでたの!?
あ、家を出てるからお見舞いを家に持って来てくれなかったのかな・・・。
「今度改めて招待するよ。」
「う、うん・・・。」
突然のことで言葉が出ない。
「あ、えと・・・おめでとう・・・。」
で、いいのかな・・・?
「サンキュ。
 さ、店に戻ろうか。」
「ん・・・。」
後で智也にも“おめでとう”を言っとこ。

小倉も今日呼ばれてるってことは、小倉も2人の関係を知ってるのか・・・。

2006年09月23日(土) 00時12分09秒 公開
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■作者からのメッセージ
スパに辿り着けず・・・。やっと侑也と智也をくっつけることができたわ。


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