日常茶飯事<next>番外編−Happiness −
日常茶飯事<next>36番外編





店長に、思い切って告白して数ヶ月。
特定の恋人は作らないって言ってたから玉砕だと思ってたのに、僕の一途な思いを受け止めてくれた。
“恋人”になれるなんて夢にも思ってなかったのに、それが今度は一緒に暮らそうって言われた。
未だに全てが夢なんじゃないかと思ってしまう。



今日はいよいよ二人で暮らす第一日目。
「大樹、荷物はこれで全部?」
「あ、はい。
 そのダンボールで最後です。」
知り合いに借りた軽トラックで十分運べるほどの少量の荷物を、少しばかり先にこの部屋に越してきた店長が、運ぶのを手伝ってくれている。
「コラ!!
 店以外ではタメ口でって言っただろ?」
「は、はい・・・じゃないや・・・。ぅ・・ん・・・。」
どうしても敬語が抜けないんだよね。
「今度からプライベートで敬語使ったらお仕置きだからな!?」
「えっ!?
 そんな・・・急に無理です!!店長!!」
お、お仕置きってやっぱりお尻を叩かれるんだよね?
「だ〜か〜ら〜。
 敬語はやめろって。それに“店長”はもっとやめろ・・・。」
「え・・・。あ、ごめんなさい・・・。」
わかっていても、ずっと“店長”って呼んでいた癖が抜けなくて・・・。
「“侑也”って名前で呼んでよ。」
「は、はい。店長・・・。あ。」
「言ってる後からこれだよ・・・。
 大樹、お尻出して。」
「えっ!?やだ・・・本当にお仕置きするんですか!?あ。」
「大樹〜〜〜。」
店長は僕の腕を引くと、机に押さえつけた。
「ひゃあぁぁ!!ごめんなさぁ〜〜〜い!!
 物差しは嫌ですぅ〜〜〜!!」
あれって、メチャクチャ痛いんだもん!!
「うん、ここは店じゃないから道具は使わないよ。」
そう言いながら、店長は手際よく僕のGパンとパンツを引き下ろした。
「い、嫌・・・やだ店長恥ずかしい・・・。」
店の事務所は結構薄暗いし、それに仕事上のことだって割り切ってるところもあるけど・・・。
「ほら、また。」
「わぁぁ〜〜〜ん!!ごめんなさい!!」
だって、名前で呼ぶ、そんな単純なことにさえ緊張して、胸がドキドキしてくるんだ。

「痛っ!!」
何の予告もなく、1発目が振り下ろされた。予告されるのも嫌・・・。
「うっ!!やだ・・・痛いっ!!」
予告されるのも嫌だけど、いきなりぶたれるのも嫌だぁ!!
「痛くて当たり前だよ。お仕置きだからね。」
僕の腰を押さえながら、店長が耳元で囁いた。
「ふぇっ・・・やぁ・・・やだぁ・・・。」
耳に当たる店長の息遣いがこそばゆくて、それでいて心地良く、僕の気持ちを昂ぶらせる。
「やだ痛い!!店長〜!!痛ぁ〜〜〜いっ!!」
「しょうがないな・・・。こっちへおいで。」
「ふぇ?」
店長は僕の腰を抱くと、奥の部屋へ連れて行った。



「こっちで続きをしよう。」
そう言ってベッドに腰掛けると、膝の上に僕を引き倒した。
「や、やだ・・・。
痛っ!!やだ痛い、やめて・・・嫌だぁ嫌!!店長〜〜〜っ!!」
店長から僕の表情は見えないだろうけど、ベッドだし、余計恥ずかしいよぉ・・・。
「“店長”はダメだってば。いつまでも終わらないよ?」
「ごめんなさい〜〜〜店長!!」
「もう・・・。」
お仕置きは恥ずかしくて嫌だって思う反面、店長と密着できる時間が増えて、嬉しいって思う部分もあるんだ。
「いくら言ってもダメなんだから・・・。」
「だってぇ〜・・・。」
「だって、じゃないよ。
 俺はちゃんと本名で“大樹”って呼んでるんだから、大樹も俺のこと、本名で呼んでくれなきゃ。」
「ぅ、ぅん・・・。努力します・・・。」
でもやっぱり緊張しちゃって名前じゃ呼べないんだ・・・。
「また・・・。
 努力じゃなく、練習しようよ。」
「え?」
店長はお尻を軽く叩いた後、僕を膝の上に座らせた。

「どうして下を向くの?」
「だって・・・恥ずかし・・・。」
向かい合わせに座らせるんだもん・・・。
僕・・・きっと、お尻より顔の方が真っ赤だ・・・。
「大樹は恥ずかしがりだからなぁ・・・。
 プライベートじゃ、まだ少ししかマトモに顔を見てないんじゃない?」
「・・・ごめ・・なさい・・・。」
店長あきれてる・・・?
キスだってまだ数えるほどしかしてないし、えっちなんて1回やったきり・・・。
「それは謝ることじゃないよ。
 下を向いたままでもいいからさ、名前を呼んでよ。」
「・・・・・。」
2人きりだと、いくら平常心を装おうとしても、どうしても意識しちゃうよ・・・。
「ほら早く。」
「・・・ゃ・・・。」
ああ、ダメ・・・。
心臓がバクバク言ってる!!
「口は開いてるのに声が聞こえないよ。」
「ぇ・・・。」
そんなとこまでしっかり見られてたら、更に緊張するじゃない!!
「俺のことだって意識しすぎだよ。
 俺のことを呼ぶんじゃないって思って言ってみなよ。」
そんなことを言われたら余計・・・。
「早く言わないとまたお仕置きするよ?」
「や、やだ・・・。」
「じゃあ“侑也”って言ってよ。」
「ぅ・・・。
・・・ゆ・・ゃ・・・。」
必死で声を絞り出したら、声が裏返っちゃった・・・。
「よく聞こえなかったからもう1回。」
そんなぁ・・・。
「ゆ・・・侑也!!」
言えたけど、これじゃあ怒ってるみたいじゃないか。
「ぷっ・・・。
 あはは・・・よく言えました。」
店長は暫く笑った後、ご褒美だってキスをしてくれた・・・。





「ええぇっ!?
 一緒に寝るの!?」
自分の部屋で布団を敷いていたら、店長が入って来た。
「もちろんだよ。
 何のために一緒に住むの。俺達はただの同居人じゃなく恋人なんだよ?
 早くベッドにおいでよ。」
「う、うん・・・。」
“恋人”だって・・・。う、嬉しい!!
「でも僕すごく寝相悪いし・・・それにイビキかいちゃうかも・・・。
 それから・・・自分じゃわからないけど、半分目開いて寝てるみたいだし・・・。」
「そんなの構わないよ。
 大樹の全てを知りたいし、そんなことくらいじゃ嫌いにならないよ。」
「でも・・・。」
最初はきっと緊張して、一睡もできないと思うんだ。
「ぐずぐず言ってないで早くおいで。」
店長は僕の腕を引いて立たせると、そのまま抱いてベッドルームへ連れて行ってくれた。







この日、やっぱり緊張して一睡もできなかった。
その後も暫く不眠症に悩まされる日々が続いた・・・。

2007年02月02日(金) 23時09分23秒 公開
■この作品の著作権は如月 深雪にあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ずっと書きたかった番外編のひとつです。


<<戻る
作品編集PASSWORD   編集 削除