日常茶飯事67
もうすぐ冬休みだ。
今年の冬休みも総ちゃんとゆうちゃんは実家に帰るみたい。



「瀬奈、一緒におやつ食べようか?」
リビングでゲームをしていたら、総ちゃんが入って来た。
「総ちゃんお仕事終わったの?」
「まだだよ。
 でも休憩もしないとね。」
あ、そうだ。
今のうちにクリスマスプレゼントの予約しとかなくちゃ。
「総ちゃん、クリスマスのプレゼントはレーシングゲームとコントローラーにしてね!!
 それとお年玉は新しいゲーム機!!」
う〜ん・・・でもゲーム機が先の方がいいかな?
新しいゲーム機はもう発売になっていて、売り切れ店続出で買えるかどうかわからないけど・・・。
本当は発売日当日に欲しかったのに、総ちゃんが行列に並んでまで買いたくないって言うから・・・。
「ゲームばかりじゃない。
 それにコントローラーってのは何なの!?」
「レーシングゲームのコントローラーだよ。
 ハンドルとアクセルとブレーキがセットになってるんだ。」
涼一が持っていて、やらせてもらったんだけど、本当に車を運転してるみたいで楽しかった。
「そんなのなくても普通のコントローラーでできるんでしょ?」
「できるよ。
 できるけど専用のコントローラーの方が楽しいもん。」
「じゃあ通知表に“A”があったらね。」
「そんなの今からじゃ無理だよ!!」
きっと通知表なんてもう書いてるよ。
僕の通ってる小学校の通知表の評価はA〜Cの3段階評価になっていて、僕はいつも“B”ばっかり。
「じゃあクリスマスまで毎日門限が守れたらね。」
それってクリスマスまで買わないつもり!?
「クリスマスじゃ売り切れてるよ!!」
「それまでに買って、門限が守れなかったら、それをお年玉にしてあげるよ。」
「それじゃあ新しいゲーム機は!?」
「あれって品薄状態で入手困難だってニュースで言ってたじゃない。」
「買えないの!?」
でも今の総ちゃんの言い方って、どっちかって言えば買う気がないような言い方・・・。
「瀬奈がいい子にしていれば買ってあげるよ。
 それに、もらうプレゼントに注文つけるのもどうかと思うよ?」
「だって欲しくない物もらっても嬉しくないもん。」
それこそありがた迷惑だよね。










そんなこんなで、クリスマスまで門限が守れたから・・・というより、侑也たちには遊びに来てもらったから、門限を守ることができて、レーシングゲームのセットも買ってもらうことができた。
「朝からずっとゲームしてるじゃない。
 もうすぐ出かけるけど、用意はできてるの?」
「うん、できてるよ。」
お昼ご飯を食べたから、そろそろ総ちゃんの実家へでかけるんだ。
「それならもうゲームをやめて、部屋の戸締りをしておいで。」
「うん・・・今やってるステージが終わったら・・・。」
やっとこのステージまで進んだのに・・・。
「今日はRV車で行くからね。」
RVって・・・あの背の高い車かな?
「深緑色の車?」
「うん、そう。
モスグリーンの車だよ。」
「わかった、もうちょっと待ってね。」
「宿題も持って行くんだよ!?」
「うん・・・。」
今日実家へ帰ったら、冬休みが終わるギリギリまでこっちに帰ってこないって言ってる。
だから冬休みの宿題も持って行けって。





まだ帰省ラッシュじゃないから、高速道路も混んでなくて良かった。
渋滞の途中でトイレに行きたくなったことがあるから、ちょっと心配だったんだよね。

あ、ゆうちゃんの車だ。
ゆうちゃんも今日帰るって言ってたけど、ゆうちゃんの方が先に着いたんだ。










暇だ・・・。
総ちゃんの実家に来て2日目。
ゲームを持って来たけど一日中やってたら飽きちゃったし、だからって宿題をする気にもならない・・・。
夏休みなら虫取りとかできるのに、冬休みなんて何もないじゃない。
総ちゃんは離れでお仕事してるし、ゆうちゃんはお昼まで寝てるから遊んでくれないし・・・。

総ちゃんの家の庭も広いけど、実家の庭はもっと広いんだ。
こんなことならサッカーボールとかも持ってくればよかった・・・。
でも思い切り蹴ってガラスを割ったら、おじいちゃんに怒られるかな。
そういえば今日はおじいちゃん、仕事に行ったんだっけ・・・。

そうだ!!
おじいちゃんはいないし、総ちゃんは奥の離れだし、ゆうちゃんは寝てるし。
庭が広いから、車だって走らせることができるんだ。
総ちゃんたちはいつも庭でUターンさせてるしね。

一度運転してみたかったんだ。
総ちゃんのRV車はオートマチックだし、そのまま発進できるように止めてあるから丁度いいや。
キーも付いてるしね。
それにエンジンのかけ方も発進の仕方もゲームでやってるし、総ちゃんが運転するのも見てるから、大丈夫だと思うんだ。

「う、うん・・・?
 足が届かない・・・。」
シートってどうやって動かすんだっけ?
わかんないから、できるだけ前に座ればいいか。
「えぇっと・・・。」
まずエンジンをかけてブレーキを踏んで・・・“D”って書いてあるところに合わせるんだよね。

「わ・・・。」
すご〜い!!ブレーキを離しただけで動いたぁ〜!!

ふと家の方を見ると、まだ寝ているはずのゆうちゃんが勝手口から出てきた。
「あっ!!」
目が合っちゃったよ・・・どうしよう・・・。

「あぁっ!?」
ゆうちゃんに気を取られていたら、ずっと前に置いてあったゆうちゃんの車にぶつかっちゃった・・・。
「きゃあぁぁ〜〜〜〜〜っ!!?」
ぶつかると同時に、ゆうちゃんのすごい叫び声が聞こえてきた。

「ちょっと・・・何やってるのよ!?
 早くバックしなさいよ!!・・・じゃなくて!!
 エンジン切りなさい!!エンジン!!!」
慌てて駆け寄ってきたゆうちゃんが窓越しに怒鳴っている。
僕は言われるままにエンジンを切り、車を降りた。

「勇一郎、今の何の音!?」
騒ぎを聞きつけたみたいで、総ちゃんも離れから出てきた。
「ちょっと!!本名で呼ぶなって言って・・・。
 そんなことより!!私のポルシェどうしてくれるのよ!!?」
「これ・・・瀬奈がやったの!?」
総ちゃんは、ゆうちゃんの車の後ろに乗り上げるように止まっているRV車と、僕の顔を交互に見て言った。
「ご、ごめんなさい!!
 僕・・・レーシングゲームしてたら、本物の車の運転してみたくなって・・・。」
予想では上手くいくはずだったのに・・・。
「冗談じゃないよ!!
 して良い事と悪い事の区別もつかないの!?」
「だって・・・ちゃんと運転できると思ったんだもん・・・。」
「言い訳なんてしなくていいよ!!
 とにかくこっちへおいで!!」
「ぃや・・・。」
総ちゃんは小脇に僕を抱えると、母屋の奥の座敷に向かって歩き出した。

「ちょっと総司郎!!私のポルシェ・・・。」
「言われなくても修理代くらい出してやるよ!!」
後ろで怒鳴っているゆうちゃんの言葉を遮るように、総ちゃんが言った。
「そんなの当然でしょ!?
私は弁償しろって言ってんのよ!!
 ちょっと・・・総司郎聞いてるの!!?」
「・・・・・。」
総ちゃんは無視してそのまま家に入った。



「うわぁ〜〜〜ん!!
 嫌だぁ・・・放して!!総ちゃん!!ごめんなさい!!」
座敷が近付くにつれ、お仕置きをされるんだって実感がわいてくる。
「お仕置きが済んだら放してあげるよ!!」
「嫌ぁ!!放して・・・今すぐ放してよぉ!!」
総ちゃんの腕から逃げられないのはわかってるけど、それでも手足をバタバタ動かしてしまう。
「何言ってるの!!
 あんなバカなことをしておいて、お仕置きをされないと思ってるの!?」
座敷に入ると胡坐をかいて座ったかと思ったら、すぐに膝に乗せた僕のお尻を剥き出しにした。
「嫌ーーーっ!!
 ごめんなさいっ!!反省してるっ!!」
座敷は普段は使ってないから、冷たい空気にお尻が晒される。
「反省するのは当然でしょ。」
「嫌・・・痛いっ!!
 痛い、やめて・・・痛いよぉ!!」
お尻を庇おうと、とっさに手を後ろに回したら、掴まれて後ろ手に押さえられてしまった。
ここって畳だから、足をバタバタさせたら足も痛くなる・・・。

「総ちゃ・・・ごめんなさいっ。
 痛い!!・・・や・・あっ・・・痛いぃっ!!」
「もしも車が暴走したらどうなってたと思うの!!
 それに、俺がどれだけビックリしたかわかってるの!?」
「ふぇぇぇ〜〜〜・・・ごめ・・なさい・・・。」
総ちゃんの車も・・・ゆうちゃんの車も傷付けちゃった・・・。
修理代っていくらかかるのかな・・・。
「や・・・痛ぁーーーいっ!!
 もぉやだぁ・・・やめて痛いよぉ・・・痛いっ!!」
「危険なことをしたんだから、たっぷりお仕置きしないとね!!」
そう言って、さっきより強くお尻を叩きだした。

「嫌だぁーーーっ!!
 もぉやめて・・・痛い痛い!!」
お尻が痛すぎて、感覚が変になってきたよ・・・。
「敷地内とは言え、キーを付けっ放しにしていた俺にも非はあるから、これくらいで終わってあげるよ。」
「いったぁーーーいっ!!」
最後に3発、一段と強く叩いて終わってくれた。

「勇一郎にもう一度、しっかり謝るんだよ?」
僕を立たせると、ズボンを穿かせながらそう言った。
「ぅっ・・・ふぇぇ・・・うん・・・。
 ゆうちゃんにも・・・お仕置き・・される?」
総ちゃんに叩かれたばっかりですごく痛いのに、それなのに・・・また叩かれたら・・・。
「大丈夫だよ。」
「ホント・・・に?」
ゆうちゃんもすごく怒ってたのに・・・。
「うん、本当だよ。
 一緒に謝ってあげるからもう泣かないで。」
「・・・っん・・・。」







やっぱりゆうちゃんはすごく怒ってたけど、総ちゃんは黙ってそれを聞いていた。
黙っていれば、そのうち怒る気が冷めてくるんだって。

もしかしたらお年玉ももらえないかもと思ってたんだけど、総ちゃんは約束通り新しいゲーム機を買ってくれた。
でもやっぱり、ゆうちゃんからのお年玉はなかった。


2007年03月30日(金) 09時02分34秒 公開
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■作者からのメッセージ
世間は春休みなのに、こっちは冬休みネタです。(笑)


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