日常茶飯事<next>39−1
今日は侑也が休みだから、久しぶりに遊びに行くことにした。
新居へ行くのは初めてだから、何だか変に緊張するなぁ。
お祝いはちゃんと渡したし、手土産はお酒とおつまみを買ったし、それだけでいいかなぁ・・・。



「総ちゃん、出かけてくるね。」
「・・・どこに?いつ帰るの?」
書斎にいる総ちゃんに声をかけたら、総ちゃんは机に向かったまま聞いてきた。
心なしか機嫌が悪そうだなぁ・・・。
もしかして、まだ言ってないのに侑也ん家に行くってわかってるとか?
「ゆ・・・侑也ん家・・・。
 夕方には帰ってくるから・・・。」
そんなに敵意持たなくたって、侑也には大樹というパートナーがいるんだし・・・。
「・・・あらゆる意味で気をつけてね。」
「う、うん。」
“あらゆる意味”ってどういう意味!?



ちょっと遊びに出るだけで、僕がどうしてこんなに気を使わなきゃならないの!?



「いらっしゃ〜い!!」
「あ、おじゃまします・・・。」
出迎えてくれたのは大樹だ。
「侑也は?」
「ちょっと用があってお店に行ってるけど、もうすぐ帰って来るよ。」
なんだ、じゃあもう少しゆっくり来ればよかったかな。
大樹と2人きりって何だか落ち着かないよ・・・。
「手ぶらじゃ何だから・・・これ・・・。」
手土産に持って来たお酒はとりあえず大樹に渡しておこう。
「僕達の仲なんだから、そんなに気を遣わなくてもいいのに・・・。
 そうだ、店長待ってる間に先に飲もっか。」
「それもそうだね。」
ただじっと待ってるよりはその方がちょっとは気楽だ。



「そういえばさ、侑也のことまだ“店長”って呼んでんの?」
さっき、そう言ってたもんね。
「うん・・・。
だってずっと“店長”だったから、名前で呼ぶのって気恥ずかしくって・・・。
でも“店長”って呼んだらお仕置きされるんだよね。」
「そ・・そうなんだ・・・?」
そういえば侑也もそういう部類だったっけ・・・。
「でもね、店長と密着できるから、お仕置きさえ嬉しかったりするんだ。
 瀬奈はそういう気持ちってない?」
「えっ!?」
いきなり何を聞いてくるんだ!!
「だって瀬奈だって恋人がいるんだからわかるでしょ?」
「いるのはいるけど・・・。」
相手は総ちゃんだし、ずっと“お父さん”だったから、イマイチ“恋人”という感覚はないんだよね・・・。
「でも・・・嬉しいって気持ちはないよ・・・。」
多分・・・。
だってあれは総ちゃんがそういう好みだから、総ちゃんが喜ぶように振舞ってるだけで・・・。
うん、絶対僕が喜んでるんじゃない。総ちゃんの方が喜んでるんだ!!





「ただいま。
 瀬奈来てるんだよね?」
侑也が玄関のドアを開けるなり、そう言いながら上がり込んできた。
侑也の予備の駐車場に車を止めて来たからわかってるはずなんだ。
「うん、先に飲んでるよ。」
「え?飲んでるって・・・。
 瀬奈車だろ!?何やってんだよ!!」
侑也は僕の手の缶ビールに目をやると素早く取り上げた。
「大丈夫だよ。
 近くだしビールの2〜3本・・・。」
子供の頃と違ってアルコールに強くなったんだから。
「バカッ!!
 飲酒運転する気か!?
 もしものことがあったらどうするんだ!!
 自分だけじゃなく総司郎さんにまで迷惑かかるんだぞ!?」
「だから大丈夫だって。」
心配性だな。

「大樹っ!!」
「は?はい!?」
「瀬奈が車で来てるのはわかってただろ!?
 どうして飲ませたんだ!!」
「あ、あの・・・その・・・瀬奈が持ってきたから・・・。」
「瀬奈が飲もうって言ったのか!?」
侑也は僕に言ってるのか、大樹に言ってるのか、空(くう)を見ながら言ったからよくわからないけど・・・。
「僕が勧めたんです・・・。」
「う、うん・・・。」
僕が庇うわけにもいかず、ただ同意して頷いた。
「バカッ!!」
「や!?店長!?」
侑也は怒鳴ると同時に大樹の腕を掴み、ソファーに座った自分の膝に引き倒した。
「や、やだっ!!」
「ゆ、侑也!?」
もしかしてここでお仕置きするつもり!?

「やだ、店長・・・。ごめんなさいっ!!やめて!!」
侑也は、ズボンを脱がされるのを阻止しようとした大樹の手を後ろ手に押さえ付けると、手際よくパンツごとズボンを脱がせた。
「やめて・・・やだ・・・やだっ!!」
大樹は恥ずかしいのか、顔は伏せたままで足だけ小刻みにバタバタさせている。
「常識くらい弁(わきま)えろ!!」
侑也は足を組んでお尻を高く上げさせると、右手を思い切り振り下ろした。
「ひっ!!」
うわ、すごい音・・・。

「やっ・・・痛い!!
 店長痛い!!やだ・・・やめてやめて!!」
「一体いつになったら“店長”という呼び方をやめてくれるんだ?」
「ご、ごめんなさいっ。」
僕は別に“店長”でもいいと思うんだけどなぁ・・・。
でも僕は第三者だからそう思うのかな。

ところで・・・僕はどうしたらいいんだろう・・・。
こんなところでお仕置きを始めるから、目のやり場に困るよ・・・。
「痛っ!!・・・あぅっ!!痛いっ!!」
音もすごいけど、やっぱりその分赤くなるのも早くて、もう真っ赤になってる。

「あ・・・。」
やだな、変な時に侑也と目が合っちゃった。
「全く・・・。
 瀬奈も飲酒運転しようなんて、何考えてるの!!」
「・・・ほんの・・・出来心で・・・。」
だって近くなんだし、安全運転するから大丈夫なのに。
「バカなんだから!!」
侑也は僕から目を背け、また大樹のお尻を力いっぱい叩き始めた。
「痛いっ!!
 もう終わりじゃなかったの!?」
「終わるなんて一言も言ってないだろ。」
「そんな・・・。
 やだ!!痛いっ!!ごめんなさぁい!!」



暫くして侑也は大樹を膝から下ろすと、徐(おもむろ)に僕の横へやってきて、僕の腕を引っ張ると膝に引き倒した。
「ひゃっ・・・!!
 や、待って・・・やめてよ!!侑也・・・。」
「・・・冗談だよ。」
侑也は何か言いたそうに口ごもった後、すぐに膝から下ろしてくれた。

びっくりしたぁ・・・。
店では叩かれてるけど、プライベートでは叩かれたことないし、ましてや膝の上でなんて・・・。
「もっと飲む?」
「う、うん・・・。侑也は?」
でもこの雰囲気って、楽しく飲める雰囲気じゃないよね・・・。
「俺は瀬奈の代わりに運転するから飲まないよ。」
「えっ!?
 僕の代わりって?」
「車置いて帰る?
 それとも総司郎さんに迎に来てもらう?
 それか俺が送るかのどれかだよ。選択肢は。」
最近車上荒らしとか盗難が相次いでるらしいから置いて帰るのは不安だし、だからといって、総ちゃんは仕事が忙しいし・・・。
でも侑也に送ってもらうのも・・・。
「・・・どうする?」
「う、うん・・・。
 侑也にお世話になるよ・・・。」
それが一番無難じゃないかなと思うんだ・・・。


2007年05月21日(月) 09時02分02秒 公開
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