日常茶飯事<next>40
梅雨も明けて夏本番だ。
この時期になるとお世話になってる出版社から、やたらお中元が送られてくる。
他にも作家の友達や後輩やらいろいろ・・・。
同じように年末にはお歳暮が送られてくる。

え〜と、これは食べてもいいけど、こっちのは別のところに使い回して・・・。
総ちゃんはケチだから、もらったお中元の包みを替えて他のところに使い回すんだよね。
もっとも、同じようなのが大量にあったって邪魔になるだけだけど。
で、その作業をやらされるのが僕・・・。
とりあえず全部包みを開けて、使い回せそうな日持ちのするものはきれいに熨斗(のし)をはがして、新たに用意した熨斗をつけて、包装すればできあがり。
熨斗書きのおかげで、子供の頃は苦手だった毛筆で書くことが、そんなに苦ではなくなった。

やっと半分くらいかな・・・。
この作業で一部屋使うんだよね。
どうせ部屋は余ってるから、どうってことないけどさ。



わ、もうこんな時間!!
そろそろ晩ご飯の用意をしなきゃ・・・。
今日はまだ買い物に行ってないのに。
それに宅配便の宛名ラベルももらって来なきゃ。





そういえば由奈はまだ帰ってきてなかったけど、お中元を触ってないかなぁ・・・。
お中元やお歳暮の時期になると一応、触らないようには言ってるけど。

「ただいま〜。」
と言っても総ちゃんは書斎に篭っていて聞こえないだろうし、由奈が出迎えてくれるとは思えない・・・。

「あっ!!由奈、それお中元用に買ったお菓子じゃないの!?」
キッチンに入って僕が目にしたのは、お中元に持って行くために用意していた真空パックのブラウニーを食べている由奈の姿だった・・・。
「・・・だって・・・包装してなかったもん・・・。」
「それはまだ包装してないからだよ。」
買ったのはいいけど、サービスカウンターが混んでたから自分で包装しようと思ってそのまま持って帰ったんだよ・・・。
「ああっ!!ジュースまで開けちゃった!?」
買った覚えのない紙パックのジュースがブラウニーの横に・・・。
でも見覚えはあるんだ。
缶ビールとジュースがセットになってたヤツだ・・・。
「勝手に触っちゃダメだって言ってあったじゃない。」
確かにこのセットも新たに包装しようと思って、包装紙を剥いだままだったけどさ・・・。
「それにもうすぐ晩ご飯だよ!?」
「今日はまだおやつ食べてなかったもん。」
それは由奈が学校から帰ってきて、すぐに遊びに行ったからじゃない・・・。

「・・・まさかと思うけど、他には開けてないよね!?」
「・・・うん・・・。」
ちょっと間が空いたけど、その間は何!?
「自分で確かめてくるよ。」
「・・・・・。」
由奈は何か言いたそうだったけど、そのままキッチンを後にした。



あぁっ!!やっぱり・・・。
これから剥がそうと思ってた分はいいけどさ、せっかく包装したのまで剥がされちゃってるよ・・・。しかもビリビリだから、包みなおすこともできないじゃない・・・。
「はぁぁ〜〜〜・・・。」
どうして“森崎”って書いてある熨斗まで剥がしちゃうかなぁ。
熨斗まで剥がさなくったって、中身はわかると思うんだけど。
いくら筆書きが苦じゃなくなったって言ったって、できるなら必要以上に何枚も書きたくないよ・・・。

「瀬奈、おなか空いた。ご飯まだ?」
「あ、うん、すぐ作るよ。」
総ちゃんが催促してくるなんて珍しいな。
「また随分ハデに破いたね・・・。」
「違うよ、これは・・・。」
「あれ?その熨斗は書き損じ?」
総ちゃんが指差した熨斗は、由奈が破いた熨斗だ。
「うん・・・。
 これは由奈が破いちゃったんだよ・・・。」
「由奈が?
 勝手に開けちゃダメだって言ってあったのに・・・。」
言わない方がよかったかな・・・。
「でも包装は包みなおせば済むんだし、由奈が食べちゃった分はまだ包装してなかったらから、食べていいんだと思ったんだよ・・・。」
「開けただけじゃなく、食べちゃったの!?」
あ!!今度は余計なことまで言っちゃった。
「・・・う・・ん・・・。」
「その由奈はどこにいるの?」
「・・・キッチン・・だよ・・・。」
「そう、わかった。
 瀬奈はご飯の用意をして。」
「う、うん・・・!?」
ご飯の用意をして、って言ったくせに、どうしてドアを閉めて行くわけ!?



先にキッチンへ行った総ちゃんは、由奈にお説教をしていた。
この調子だと絶対お仕置きするだろうし、入りづらいなぁ・・・。
でもご飯を作らないといけないし、お仕置きが始まったらもっと入りづらいし・・・。

意を決して入ったら、由奈に睨まれちゃったよ。
結果的にそうなっちゃっただけで、別に言いつけたわけじゃないのに・・・。

「由奈!!聞いてる!?」
総ちゃん、声が怖い・・・。
「は、はい・・・。」
僕を睨んだ由奈は既に涙目だったし、キッチンに入ったら入ったで、とても居心地が悪い・・・。
「お仕置きをするからこっちへおいで。」
「やっ・・・ゃだ・・・。」
総ちゃんは椅子から立ち上がると、向かい合って座っていた由奈を引き寄せた。
多分・・・。
多分ってのは、僕は背中越しに声や気配を感じているから。
ご飯の用意があるし、それにとても直視なんてできない。

「やだ、パパ!!ごめんなさい!!」
椅子に座った音がしたから、今膝に乗せられたくらいかな。
由奈がジタバタしてるのも、何となく気配でわかる・・・。
「ごめんなさいっ!!
 やめて、パパァ!!嫌っ・・・痛いっ!!」
由奈の悲鳴とお尻を叩く音が同時に聞こえてきた。
音から察するとかなり痛そう・・・。

「ふぇぇーーーん!!やだ、痛い!!ごめんなさい!!」
由奈がお仕置きされてる場面は何度も見てるけど、やっぱり自分がお仕置きされてる気分になる・・・。
「やぁ・・・痛い、痛い!!
 もうやだぁ!!やめてパパ・・・ごめんなさい!!」



そろそろ・・・いいかな?
「総ちゃん・・・。
 ドアを閉めておかなかった僕にも少なからず非はあるんだし、あんまり叱らないでやってよ・・・。」
僕も小学生の頃、勝手に開けちゃってお仕置きされたんだよね・・・。
「触るなって言ってあったのに、言いつけを守らない由奈が悪い。」
「でも・・・由奈だって悪気があったわけじゃないだろうし・・・。」
「余計な口出しはするな!!」
「ご、ごめん・・・なさい・・・。」
ブラウニーはともかく、他のは元々ウチへもらったお中元なんだから、そんなに怒らなくたっていいと思うんだけどな・・・。



「うわぁぁーーーん!!
 ごめんなさい!!痛い・・・やだぁ!!」
由奈の泣き声はさっきよりもずっと悲壮感を増している。
「あの・・・ご飯できたんだけど・・・。」
声をかけづらいけど、ご飯ができたのは本当だし、総ちゃんだっておなかが空いたって言ってたんだから、今度こそ終わってやってよね・・・。

「・・・これで終わりだけど、今度から絶対に勝手に触っちゃダメだよ!?」
「うぇぇっ・・・は、はい・・・。」
「顔を洗っておいで。」
総ちゃんは由奈を膝から下ろすと、ズボンとパンツを上げて洗面所へ行くように促した。



「こんな暑い時期にどんぶり?」
「う、うん・・・。親子丼・・・。」
だって、これが一番手っ取り早く出来て、由奈をお仕置きから解放してやることができるんじゃないかと思って・・・。
それに由奈は親子丼が好きだし。
「そういえばさっき、自分にも少なからず非はあるって言ってたよねぇ?
 明日、由奈が学校へ行ってる間に、瀬奈もお仕置きしようか?」
「えぇっ!?やだよ!!」
「冗談だよ。」
「・・・・・。」
もう!!総ちゃんが言うと冗談に聞こえないよ。





2007年07月16日(月) 00時43分41秒 公開
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■作者からのメッセージ
お中元を使いまわす総ちゃん、かなりケチです。(笑)でもここまでしないとお金は貯まらない!?
で、由奈が出てくると、瀬奈はわりとマトモ!?


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