日常茶飯事<next>41
チャイムが鳴って、モニターで確認したら小倉さんだった。
「締め切り・・・今日じゃなかったよね?」
玄関を出て思わず口にした。
頭の中では出来上がっていて、あと数行書けば終わりだけど。
「こんばんは。
 今日はプライベートの方でおじゃましました。」
プライベート?瀬奈に用事・・・とか?
「お時間大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だけど・・・。」
って、俺に用事!?
「実はこれ、息子が由奈くんに買ってもらったんだって持ってたんですけど・・・。」
そう言って小倉さんが差し出したのは、携帯ゲームのカセットだった。
「これって先日発売になったばかりみたいだし、こんな高価な物を頂くわけにはいきませんので・・・。
それでお返ししようと・・・。」
「あの・・・よくわからないんだけど、それを由奈が買ったってこと?」
「ええ、息子が言うには自分の分と息子の分を買ったんだそうですよ。」
自分の分と?
由奈は無駄遣いをする方じゃないけど、それでも二つも買うお金なんて持っていないはずだ。
「二人でゲーム専門店へ行って買ったんだって言ってました。」
「今日はそちらの家にお邪魔してたんじゃ・・・?」
由奈は、小倉くんの家へ遊びに行くって出かけたのに。
「え?いえ・・・。
 息子は公園で遊ぶと言ってでかけましたが・・・。」
ということは、由奈は嘘をついて出かけたのか!?
「困ったな・・・。
 由奈は今お風呂に入ったばかりだから、事情を聞くにも・・・。」
「とにかくこれはお返ししますので、後(のち)にでも由奈くんに事情を聞いてください。
 では失礼いたします。」
「あ、はい・・・。気をつけて・・・。」



とは言ったものの、送った方がよかったかな・・・。



何だって人の分までゲームのソフトを買ったんだろう・・・。
いや、それよりお金の出所は?
俺の財布は常に書斎にあるから、俺の財布を触ったんじゃなさそうだ。
香山のお義母さんか?
でも電車で結構かかるし、由奈が自分からお小遣いをねだることは考えにくい・・・。
となると瀬奈の財布か?
瀬奈は、今日はバイトだからって出かけていないんだよね。
もっとも瀬奈に聞いたところで、瀬奈のことだから、自分の財布の中にいくら入っていたかなんて覚えてなさそうだ。





「パパ、お風呂空いたよ。」
由奈がやっとお風呂から上がってきた。
「うん、ちょっと聞きたいことがあるから、由奈の部屋へ行こうか。」
「う、うん・・・。」
俺の声のトーンが低くなったからか、少し動揺しているような感じだ。



「そこへ座って。」
「・・・・・。」
部屋に入り、自分が座った目の前のスペースを指差すと、由奈は黙ったまま正座した。
「・・・これ、小倉くんに買ってあげたんだって?
 自分の分も買ったんでしょ?お金はどうしたの?」
さっき預かったゲームソフトを取り出し、由奈の目の前に差し出した。
「・・・あの・・・。」
俯いたまま声を出さずに、涙だけが零れ落ちている。
「お金はどうしたのって聞いてるんだよ。」
「・・・ふぇっ・・・っん・・・ごめんなさい・・・。」
「それじゃあ答えになってないじゃない。
 ゲームのソフトを買ったお金はどうしたの!?」
「ぅえぇぇっ・・・お兄ちゃ・・の・・・お財布から・・もらっ・・た・・・。」
やっぱり瀬奈の財布か。
「もらった・・・って。
 瀬奈があげるって言ったの?」
「ぅ、ううん・・・。違・・う・・・。」
「それは“もらった”んじゃなく“盗った”んでしょ!!」
「だって・・・えっく・・・お兄ちゃ・・・ゲーム・・貸してくれない・・だもん!!
 ちょっとでいいから・・・ふぇえぇぇんっ・・・貸してって言って・・んのに!!」
そうだとしたら瀬奈にも少なからず否があるわけだけど。
「でもゲームは瀬奈の物なんだから仕方ないじゃない。」
瀬奈の影響か、由奈もゲームが大好きなんだよね。
「すごくやりたか・・・っすん・・・ゲームなんだもん・・・。」
「だからって、人のお金や物を盗ることは悪いことだってわかってるでしょ!?
 前に万引きした時、いっぱいお仕置きしたよね!?そのことも忘れたの?
 瀬奈の財布からいくら盗ったの!?おつりは?」
ゲームソフト2つ分だから、それ相当の金額で、おつりも微々たるものだと思うけど。
「・・・1万円・・・おつりは・・持ってる・・・。ごめ・・ん・・なさい・・・。」
俯いたまま首を横に振り、声を絞り出している。
「謝るのなら瀬奈に謝りなさい!!」
俺に謝ったって、お仕置きがナシになるわけでもないのに。
「それから小倉くんの家に遊びに行くって嘘ついたでしょ。」
ゲームを買いに行く、なんて言えないもんね。
「ふぇえぇぇっ・・・ごめん・・なさい。」
「泥棒はするし、嘘はつくし、たっぷりお仕置きしないとダメみたいだね。」
由奈の腕を引くと、正座をしている膝の上に引き倒した。
「や、やだっ!!ごめんなさいっ!!
 パパ・・・やだ!!やめて!!」
「大人しくしなさい!!」
「あぅっ!!」
ズボンの上から1発叩き、大人しくなったところでお尻を剥き出しにした。
パジャマだからすごく脱がせやすい。

「痛ぃっ!!
ふぇっ・・・っく・・・やぁ、やだ痛い。」
「お金を盗ったのはこれが初めて?」
「ぅ、うん・・・ぐすっ・・・初めて・・・。」
「本当に?」
瀬奈の場合は少額からだんだんエスカレートしていったんだよね。
「痛ぁーーーいっ!!
 うぇえぇぇっ・・・本と・・・初めて・・・。」
「嘘をついたらいつまでも終わらないからね?」
「本当に・・・初めて・・・。
信じてよぉパパァ!!うわぁぁーーーん!!」
「・・・信じるよ・・・。」
見たところ由奈の部屋には見慣れない物はなさそうだし、嘘をついているとは思えない。
だからと言って数を減らすわけでもないが。



「嫌パパ・・・痛い・・・もうやめて!!」
今しがたまで大人しくしていた由奈が、ジタバタと暴れだした。
「ダメだ。まだ終われないよ。」
瀬奈のお金を盗ったんだから、そのことについては本来は瀬奈も交えて話すことだけどね。
「嫌だぁ!!痛いよ・・・痛いっ!!ごめんなさいっ!!あぁーーーん!!」
いつもよりは強い目に叩いているけど、まだ数的にはいつもと大差はない。
あとは嘘をついた分だな。

「痛っ!!・・・うぇぇ〜〜〜っ・・・痛い!!痛いっ!!」
由奈も色が白いからすぐに真っ赤になって痛々しいけど、元に戻るのも早いんだよね。
それに道具ではなく手で叩いているから、よほどひどい叩き方をしない限り痕が残ることもないし、中途半端に終われば、また同じことを繰り返す可能性が高い。
性格の問題もあるだろうけど、瀬奈が由奈くらいの時は真っ赤になったお尻が痛々しく、かわいそうになって中途半端に終わっていて、同じことを何度も繰り返していたんだよね。
「しっかり反省するんだよ?」
「っん・・・痛い!!やぁ・・・あぁっ!!」
「手をよけなさい。」
さっきまで俺のズボンを握り締めて我慢していたけど、耐えられなくなったのか、後ろに手を回してお尻を庇う仕草をした。
「嫌・・・もぅ嫌だぁ〜・・・。
 ぇっく・・・もうやめて・・・パパァ!!」
「・・・もう少しだけダメ。」
由奈の手を掴み、腰の辺りで押さえ付けた。

「ぅあぁ・・・ごめんなさいぃ・・・。」
お尻も腫れて、叩くたびに熱が手に伝わってくる。
もうそろそろ許してやってもいいかな・・・。
「由奈、本当にもう二度と泥棒なんてしちゃダメだよ?それに嘘をつくことも。」
「ぅ、ぅん・・・ごめ・・んなさい・・・。」
俺は後ろ手に押さえていた手を離すと、パンツとズボンを穿かせ、膝から下ろした。
せっかくお風呂に入ったのに、顔は涙でくしゃくしゃだし、体もジタバタ暴れたせいで、少し汗ばんでいる。

「由奈、もう1回お風呂入る?
 それともお尻が痛くてそんな気分じゃない?」
「・・・パパも・・・入る?」
「うん・・・。
 そうだね、一緒に入ろうか?」
「うん!!」
よかった、いつもの由奈だ。
今日は少し厳しくしたから、嫌われたかなと思った。







次の日、由奈は瀬奈に謝ったみたいだけど、瀬奈は全く気にしていない様子だった。
それどころか通信して対戦してたし・・・。
因みにあのソフトは“担当”の小倉さんにあげた。





2007年08月14日(火) 16時40分38秒 公開
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