日常茶飯事<next>番外編−真夏の太陽−
周りのヤツらはゲイでも、俺は・・・俺だけはノーマルだと思っていた・・・。
思っていたのに・・・。
気付けば“そっち”趣味になっている自分がいた・・・。



侑也の店はホストクラブだが、ホストの中にはゲイだとカミングアウトしているヤツも何人かいるらしい。
そこで最近、そういったホストと客のために、新たに2店目を出店した。
それで、先日新しい子が入ったから覗きに来たら?と誘われた。



知り合いだから安くしてもらえるとはいえ、俺みたいな低所得者が、そうそう行けるような店じゃないんだよな・・・。
それに、そっち趣味といっても相手はスタッフなんだから、割り切った付き合いしかできないじゃないか。







20歳だって聞いてたけど、顔も若干幼い感じがするし、話の内容も20歳にしてはお粗末だよなぁ・・・。
あー、でも瀬奈も26歳にしてあれだもんな・・・。
「どこまで送ればいい?・・・ですか?」
一通り店で過ごした後、その彼『ショウ』に送ってもらうことになった。
「××駅でいいよ。」
「わかりました。
 あ、これ俺の名刺。また指名して下さいね。」
手書きか、珍しいな。
大抵のヤツはパソコンだし、メッセージくらいがせいぜい手書きのヤツばかりなのに、全部手書きとは。

「っ・・・。」
シートに座りなおしたショウが顔をしかめた。
多分、侑也にやられたんだろう・・・。
侑也にあんな趣味があるとは、最近まで知らなかった・・・。

「おい、断りもなくタバコを吸うな!!」
俺は別に嫌煙家ではないが、こんな狭い空間で断りもなしに隣で吸われるのは腹が立つ。
「あ、はい・・・。
涼一さんタバコ嫌い?」
「俺はマナーのことを言ってんだ。」
「はぁ・・・。」
コイツ、わかってねーのか!?
「涼一さんって見かけによらずカタイんだね。仕事何?」
「・・・公務員。」
「あ〜〜〜・・・何かそんな感じだよね〜。」
客に対して何なんだ。その口の利き方は!!
夏休みだけの短期間だからって、客商売って自覚がないのか!?



「ここでいいよ。」
駅はいつになく人が多いみたいだから、手前で降りることにした。
「涼一さん、キスしていい?
 俺、涼一さんってスゲー好み。」
「そういうのは・・・普通こっちから言うセリフじゃないのか?」
俺も、ショウは顔的には好みだ・・・。
「俺・・・夏休み終わったら店やめるし・・・。
 その時は付き合って欲しい・・・。」
「・・・・・。」
それも・・・こっちから言うセリフだと思うんだけど・・・。
でも、ここまでストレートに言われたのは初めてだ・・・。しかも初対面で。
「考えとく・・・。」
俺はショウに軽くキスをすると車から降りた。







とは言ったものの・・・。
相手は学生だし、6歳の年の差は結構大きいし・・・。
それに、公務員を馬鹿にしてなかったか?
「あっ!!」
そんなことを考えていたら、目の前を信号無視のバイクが横切った。

「前の黒色の中型バイク、左側に寄って止まりなさい。
 黒色の・・・。」
ナンバープレートを上向きにして隠してるから、ナンバーがわからないじゃないか!!
しかもスピード上げたけど、逃げる気か!?
「前の黒色の中型バイク、左側に寄って止まりなさい!!」
俺から逃げられると思ってるのか!?
でも事故を起こされたら厄介だから、深追いはするなというマニュアルがあるんだよな。

お、諦めたのか?意外と素直に止まったな。
俺は違反者の前に回りこむと、運転手の元へ向かった。
「バイクのエンジン止めて、ヘルメット取ってくれる?」
え?ショウ?
ヘルメットを取った運転手の顔は、間違いなくショウだ。
「・・・止まりなさいと言ってたのが聞こえなかった?」
「聞こえてました・・・。
 でも俺じゃないと思って・・・。」
白々しいなぁ。
「キミの他にバイクも車もいなかったよ。
さっきの直進の信号、赤色だったけど気付かなかった?」
「あ〜〜〜ハイ、黄色だった。」
「赤色だったよ。
信号無視の違反切符切るから、免許証出して。」
「黄色だったってば。」
「赤色だよ。
 早く免許証出して。それとも持ってないの?
 持ってないなら、話は違ってくるんだけど?」
無免許か?めんどくせーなぁ。
「持ってるよ。持ってるけどさぁ・・・。」
ショウは渋々ながら免許証を取り出した。

免許取りたてか・・・。まだ1ヶ月も経ってないじゃないか。
「ん?」
この生年月日って・・・。
「キミ・・・高校生?」
「は、はい・・・。」
20歳ってのは嘘か!?
侑也のヤツ、年齢確認しなかったのか?高校生なんか雇ったら、犯罪じゃねーか。
「それからね、このナンバープレート元に戻しなさい。整備不良だから。」
「ハイ・・・。」



住所・氏名などを確認しながら違反切符の処理を終え、免許証と共に罰金納付書を手渡した。
最後まで俺のことに気付かなかったな。
もっともヘルメットかぶってサングラスかけてりゃ、顔の大部分は隠れてるけど。







職権乱用みたいで嫌だけど、侑也が犯罪者になったらもっと嫌だからな・・・。
「急に来て何かと思えば・・・。
 そんなにショウが気に入ったのか?
 涼一ってもっとかわいい子が好みかと思ってたけど、意外と男っぽいのがいいんだね。」
「気に入ったから辞めさせろって言ってんじゃねーよ。アイツ、高校生だぞ。
 しかも16歳の未成年だ。」
「16歳!?そんなはずないよ。
身分証明に免許証のコピーだってもらってるし。」
そう言って履歴書を見せてくれた。
「よく似てるなぁ。
 これ、兄貴の免許証だろ。」
兄貴は実年齢より幼く見えるし、ショウはしっかりした顔つきだから、4歳の年齢差があるようには見えない。
「ええっ!?
 涼一が、捕まえた弟をショウだって思い込んでるだけじゃないの!?」
「あのなぁ、いくら似てるからって俺が間違えると思うか!?
 店に本人がいるんだから聞いたら?」
違反者も、違反者の免許証の写真も、間違いなくショウだった。
「それから干支を聞いてみろ。本当に20歳なら卯(う)だけど、16歳なら未(ひつじ)だ。」
年をごまかしていても干支を聞かれると大抵の場合、ごまかしている年の干支が咄嗟に出なくて、本当の干支を答えるんだ。



侑也に呼ばれて、ショウが事務室に入ってきた。
「あ、涼一さん。来てくれたんだ。」
「ちょっと用があってね。」
ショウが高校生だとわかった今、店を辞めさせて・・・その後、俺はどうすればいいんだ・・・?
「ショウ、高校生なんだって?」
「え?いえ、大学生です・・・。」
「干支は何?」
「は?干支?未・・・。」
やっぱり・・・。
「20歳なら卯じゃないの?」
「あっ・・・。」
「高校生なんだね?」
「・・・はい・・・。」
「残念だけど、うちの店じゃ高校生を働かせることはできないんだ。
 急だけど今日で辞めてもらうよ?」
侑也の通告にショウは俯いたまま黙って頷いた。





6歳だと思ってた年の差は現実には10歳で、おまけに高校生で未成年なんて、さらに分が悪くなってるじゃないか。
「送るよ。」
とりあえずショウを、家に送ることにした。

「涼一さん・・・。俺・・・高校生だけど・・・いい?」
「それについては俺も色々話したいから・・・。
 俺の家に来るか?」
って、俺は何を誘ってるんだ!?
「家って・・・家の人は?
涼一さん、一人暮らし?」
「ああ・・・。」
去年、兄貴が結婚して実家で両親と同居を始めたから、俺は家を出たんだ。



ほんの5分程で家に着いた。
「でも・・・なんでばれたんだろ・・・。」
「・・・俺がばらしたから。」
「えっ!?なんで・・・どこで俺のこと調べたの!?
 もしかして涼一さん、ストーカー!?」
なぜ、そうなるんだ・・・。
「昼間会っただろ?
 キミは全く気付いてないみたいだったけど。」
「昼間?今日?
 え?どっかで会った?」
コタツをはさんで、向かい合って座っているショウが、ものすごく不思議そうな顔で聞き返してきた。
「信号無視で捕まったろ?」
「あ、うん・・・。
 なんで知ってんの?」
ここまで言ってんのに、なぜあれが俺だと気付かないんだ!!
「あれは・・・あの白バイは俺だからだ。」
「えっ!?えぇーーーっ!?
 だって涼一さん、そんなこと一言も・・・。」
「公務員って言っただろ。」
「あ〜・・・なんだよ〜・・・。
 もっとはっきり言ってくれればよかったのに・・・。」
初対面では言いにくいんだよ。
「で、涼一さんとしては、俺のことはどうなの?」
どうもこうもお前はまだ子供じゃないか。
「お前こそどうなんだよ。
 俺はお前より10歳も年上なんだぞ?」
相手が未成年じゃ迂闊なことはできないのに、俺は、ショウに期待させるようなことを言ってどうするんだよ・・・。
それでも、かわいいと思うし、危なっかしくて目を離せなくなってきている・・・。
「俺、涼一さんがスゲー好みだって言ったじゃん。
最初会った時に年齢聞いてるんだし、10歳くらいなんてことないよ。
涼一さん、俺のこと拒否しないってことは、付き合ってもいいと思ってくれてんだね。」
「え!?いや、そういうわけじゃ・・・。」
向かい合って座っていたショウが、いつの間にか俺の目の前に来ていた。
「だったら嫌だって・・・付き合いたくないって言えばいいじゃん。」
確かにそうだ・・・。嫌だって言えばいいものを、俺は何を躊躇してるんだ・・・。

「そういうわけじゃない・・・。
 嫌なら家になんて連れて来なかった・・・。」
それどころか、わざわざ待っていて、『送る』なんて理由をつけてまで、一緒にいなくてもよかったんだ。
「じゃ、本格的にじゃなくて、試しでもいいからさ。付き合ってよ。」
試したら返品きかなくなりそうじゃないか。
「決まりだね。」
答える間もなく、ショウは抱き付いてキスをした。

「・・・!!」
「な、何・・・?涼一さん・・・。」
思わずショウを突き放したのは、キスが嫌だったわけではなく、タバコの臭いだ。
コイツはまだ未成年だったんだ。
「お前、今日もタバコ吸っただろ!?」
「う、うん・・・。
 あっ!!
いや・・・吸ってない・・よ・・・。」
「それだけ臭いが残ってて、何が“吸ってない”だ!!
 未成年が、喫煙や飲酒をしてもいいと思ってるのか!?」
「だってそれは・・・。
それは・・・そう!!不可抗力!!
 お客さんに勧められると断れないじゃん?」
「そもそも年齢を偽って働いてたのはお前だ。
 それに初めて会った日、俺は全く勧めてなかったぞ。」
「あ、あれは・・・その・・・。」
ショウは『かわいい』というより『おもしろい』なぁ。

「こっち来いよ・・・。」
ショウの腕を掴むと、自分の方へ引き寄せた。
「え?うん・・・何?」
「お仕置き。」
「へ?」
呆気(あっけ)にとられているショウを膝に引き倒すと、ズボンと共にパンツを下げた。
「な、何!?何すんの!?」
「お仕置きだって言ったろ。お尻を叩くんだよ。」
「待ってよ!!
 俺、そんな趣味ないし・・・嫌だよ!!」
「それはよかった。
 そんな趣味だと、お仕置きじゃなくなるからな。」
俺だってそんな趣味はないけど、なんとなく、お仕置きという言葉のイメージが、お尻を叩くことに直結した。
多分、侑也がそんな趣味なのと、昔瀬奈に、よく総司郎さんからお尻を叩かれた、という話を聞かされていたからだと思う。
「嫌だ、涼一さん!!やめてよ、放して・・・いてぇっ!!」
ジタバタと暴れるショウを抱え直すと、お尻全体に当たるように手を振り下ろした。
「やめて、やめてってば!!・・・恥ずかしぃ・・・。」
「2人きりなんだから、いいじゃないか。」
はっきりとは見えないけど、お尻以上に顔を真っ赤にしてるのがわかる。
「それでも嫌だっ!!
 俺・・・ガキじゃねーし!!」
「俺から見れば十分子供だ。」
それなのに恋愛対象にしていいのか・・・。
「ひっ・・・痛っ・・・いてぇっ!!
 やめてよ・・・もういいじゃん!!痛いってば!!」
ジタバタと足掻いてる姿は余計に子供っぽく見えて、かわいさも増すなぁ。
侑也の言ってたことが、わかるような気がする・・・。
「嫌だっ!!涼一さん!!やめてよーーー。」
「反省したらやめてやる。」
「してる・・・。
 もう吸わないからやめて!!酒もタバコもやめる!!」
とってつけたようなセリフだ・・・。
「やめるってことは、常習的にやってたわけだな。」
「そ、そんなこと・・ない・・・痛っ!!
 たまたまだよ!!っく・・・いてぇ。本当だよ。」
あれは相当吸ってる吸い方だった。
「今まで補導されたことは?タバコはどうやって手に入れた?」
「捕まったことは・・ない・・・。
 タバコは・・・親父がまとめ買いしてるから・・・。」
これは本当らしいな。

かなり赤くなって熱を帯びてるけど、やめるタイミングがわからなくて、さっきの見え透いた嘘をついたことを、謝らせることにした。
「やめてやってもいいけど、他に言うことはないか?」
個人差もあるが、相当叩いても暫くすれば腫れも痛みも治まるって、侑也が言ってたなぁ。
「え?えぇ?
 他に・・って・・・痛いっ!!・・・何?
 俺何もしてない・・・。」
「嘘をついただろ。」
それも見え見えの嘘を。
「ごめんなさいっ!!
 でも、あれは・・・いってぇっ!!」
「言い訳はいらない。」
「つっ・・・ごめんなさい・・・。」
初めてだし、あまりしつこくやったら虐待だ・・・。
「今日はこれくらいでやめてやるよ。」

「うぅっ・・・痛い〜〜〜・・・。」
俺の膝から解放されたショウは、パンツを上げることもなく、座り込んでお尻を抱えている。
そんな無防備で子供っぽい姿が、ショウを愛おしいと、守ってやりたいと思えた。

「そういえば・・・。
 お前、あの時・・・止まれって言った時、スピード上げただろ?」
「え・・・?
 ううん・・・。逃げようだなんて・・そんなことは・・・。」
「やっぱり逃げようと思ったんだな!?」
なんてわかりやすいヤツ・・・。
「ち、違うよ!!
 や、一瞬・・思ったけど・・・でも逃げれるわけないって思って・・・。」
変な意味ではなく、苛めたいと思う気持ちもわかった・・・。
なんていうか、からかう感じかな・・・。
「わぁぁーーーっ!!
 嫌だーーーっ!!ごめんなさいーーーっ!!
 涼一さん、やめて・・・嫌ーーーっ!!痛いーーーっ!!」
ショウを再び膝に引き戻し、3発だけ叩いて終わりにした。

「・・・マジ痛い・・・。」
泣いてはないけど目が潤んでいて、思わず抱きしめたくなる。
「・・・飯・・・食いに行くか?」
ずっとこのままで2人きりで部屋にいれば、きっと気持ちを抑えられなくなる・・・。
「う、うん・・・。」
「だったら早くズボンを上げろ。」
俺は車のキーを手に取ると、ショウと目を合わせることなく立ち上がった。
「あ、待って・・・。」
ショウはあたふたとズボンを整え、俺の腕にまとわりついてきた。
「周りから変な目で見られても知らないからな。」
「年齢差があるから大丈夫だよ。
 ふざけてるようにしか見えないって。
 それに俺、別にかまわないよ。涼一さんは嫌?」
「俺だって別に。」
ただ、近親者や同僚にカミングアウトするのは、まだまだ先になりそうだ。

 
2008年08月28日(木) 01時18分16秒 公開
■この作品の著作権は如月 深雪にあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
相変わらずセリフばかりです・・・。
涼一だけはノーマルのはずだったのに、短編を書いているうちに涼一でいけるんじゃ・・・?ということで、日茶の番外編に。警官/高校生のカップリングじゃなかったのに、なぜか涼一に白羽の矢が。(笑)


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